第2章 心をさらったあなたへ
静かに聞いていた不死川さんは一言だけ
頑張ったなァ、と言った
その音色に込み上げたものをほとんど反射で堪えると、頭が胸に押しつけられた
規則正しい、温かな音がする
「だからもうこらえなくていい」
不死川さんの優しさがじわじわと心に広がって、目からあふれた
ぽん、ぽんとゆったりとあやすような手の拍子に押し出されるように、次から次へと溢れて止まらない
あの日から初めて、子供のように声を上げて泣いた。
「…落ち着いたか?」
「…は、…い…ありがとうございます」
だからもう大丈夫ですと言いたくて体を離したのに、見上げた不死川さんが見たこともない優しい顔をしていて、また動けなくなった
「不死川さんは…そんなお顔もなさるんですね」
「はァ?」
あっという間に、いつもの厳しい顔に戻ってしまった
「あーあ…せっかくの美丈夫が台無しです」
「だァれが美丈夫だ。頭、医者に診てもらったほうがいいんじゃねぇか」
「私医者です」
「…………」
「…ふふ、」
「お前も」
「え?」
「もっとそうやって笑ってろォ」
私いま、笑って…?
ぺたぺたと確認するように自分の顔を触っていると、堪えかねたように不死川さんが吹き出した
「ひ、ひどい…!ひとの顔見て笑いましたね…!!」
「お前はそうしてる方がずっといい」
「う…っ今日は大変お世話になりました!お大事に!!また来ます!!!」