第2章 心をさらったあなたへ
胸糞悪ィ話だった
なのにコイツは泣くまいと息を詰めて、俺が制止しても聞きゃしねぇ。
話してぇなら話しゃいいと思っていたが、耳にこびりついた言葉が聞こえて咄嗟に手が伸びていた
「…人殺し、と…っ」
体ごと寝台に引き上げ、背をさする
不自然な呼吸音を繰り返す雪村の目は焦点が合わず、手は冷え切って硬直したようになっていた。過呼吸を起こしてやがる。
「もういい」
「っしな、ずがわ、さ」
「俺に合わせて目一杯息吐け。苦しいだろうがゆっくりな」
硬い手を握ってやると、少しだけ握り返してきた
「そうだァ、偉いぞ」
震える小せぇ体に、思わず弟妹達にしていたように声をかけてしまう
やがて落ち着いてきたのか、何かを繋ぎ止める杭にするように雪村の手に力が戻り始めた
「私は正直、鬼よりも人間の方が怖いし、憎いです。
でも鬼殺隊に来て、そんな人たちばかりではないと、血は繋がらなくとも本当の家族のように思ってくれる人がいることを知りました。だから私はそれに報いたい。
ここが、私の、家族です。」