第2章 心をさらったあなたへ
ーーー夢を見た。
暖かな風に頬をくるまれるような
優しい息吹がくすぐるように髪をさらって
まるで守るように私の肩を包む
ちょっと重い毛布をかぶった時みたいな、安心する温かさを抱きしめると、その風はふわりと腕をすり抜ける
「ん…まって……あれ…?」
「お目覚めかァ?」
「はっ…!!!」
体を起こすとぱさりと落ちた気配がして、
拾い上げるとそれは『殺』の羽織だった
「あっ…!すみません!大事な羽織を」
慌ててはたはたと払い差し出すと、不死川さんはなんでもない風にさらりと受け取った
「昨日は、悪かった」
「へっ!?いやあの、私こそあんな忍び込むみたいな…ぁぇっ!?」
ーーーやられた……!!!
「腕、痛むほど掴んじまったかと思ってたんだが……なァ?」
「忘れてください…全て…何もかも…洗いざらい…」
「何のコトだァ」
この人は…!!!どうあっても私の口から言わせるつもりだ!!!鬼!!!
「今なんか失礼なこと考えたろ」
「はい!あイヤ、いいえ!!!」
「テメェ…」
「どうぞ…ひと思いに…」
またしても傍らの日輪刀を手渡すと、こちんと柄でおでこを小突かれた
「てっ!?」
額に手を当てて不死川さんを見返すと、はぁーと呆れたように息を吐いた
「…その腕」
手を挙げたことで、肘まで下りた袖から包帯がしっかり見えていた
「あ…これは…その、ほら、手が冷えるので…巻けば少しは温かいかと…」
この期に及んでボロボロとこぼれる言い訳は、尻すぼんで消えてしまう
「血ィ出てんぞ」
「う…」
ーーーーー『千聡はもっと、実弥を信じてあげてもいいのではないかと思うよ』
私は、静かに包帯の結び目に手をかけた