第2章 心をさらったあなたへ
灯りを点けすごすごと座り直した雪村は、いつもの白衣ではなく紺藍の着物を着て髪を下ろしていて、少し幼く見えた
「………」
「…………」
「…………何か言ってください…」
「何か言うのはテメェだろ」
「…あの…い、いつから、起きてたんですか…?」
顔を上げない雪村が小さくつぶやいた
「あぁ?」
そこかよ。
「…………意外と大胆なコトすんだなァ」
うっすら笑ったことがバレたらしい。ばっと泣きそうな顔を上げて今度は耳まで真っ赤になりやがった
「…不死川さんの意地悪おはぎ!!!!スケベ柱!!!!!!!!」
「はァ!?テメェ!っつかおはぎバカにしたろ!おはぎに謝れ!!あとその不名誉な二つ名はなんだァ!?」
「もう無理です生きていけない…産屋敷の舞台から飛び降りたい…」
「訳わかんねェよ」
「わかんなくていいです…」
…ガチャ…チャキン
「さぁどうぞ。煮るなり焼くなり斬るなりお好きになさってください…」
雪村はすぐ脇に立てかけてあった日輪刀を俺に握らせると、目を閉じて布団に突っ伏した
「はぁぁ…煮ても焼いても食えねェから帰れ。それとも今から本当に食われてェか」
最後のは冗談だ。胡蝶に見つかろうものなら本当に命がねぇ。
「…………」
「コラ雪村」
…すぅ…すぅ……
「冗談だろォ」
夜中に男の枕元で手を握り、口付けまでしておいて寝るだァ…!?!?
ほんっっっとどういう神経してんだコイツ
艶のある柔らかな髪を撫でると、へにゃりと幸せそうな笑みを浮かべた
「……クソがァ」