第2章 心をさらったあなたへ
於 鬼殺隊本部
「とても順調に回復されています」
「その知らせが聞けて嬉しいよ。千聡も実弥も頑張っているんだね」
「今日はもう一つ、お話があって参りました。
…蝶屋敷を、辞めさせていただきたく思います。不死川様の今後の治療は胡蝶様に引継ぎをと考えております。」
「…理由を聞いてもいいかな」
「…不死川様が…おそらくですが、お気づきになりました。
私はこの力のために故郷を失った身です。もし力のことが外部に漏れれば……っ…私は…もう二度と家族を失いたくはありません。
もうここにいるべき人間ではなくなりました。
孤児だった私を拾って置いてくださったこと、感謝してもしきれません。御恩をこんな形でお返しすることになってしまい申し訳ございません。」
「千聡、顔を上げておくれ」
「……はい」
「実弥は、そのことに何か言っていたかい」
「…何もお聞きになりませんでした」
「そう。
これは私の考えだけれど、千聡はもっと実弥を信じてあげていいのではないかと思うよ」
「それは…」
「どうしてもと言うなら無理に引き止めることはできないが、千聡は私の大切な家族だ。だから、どうすべきかではなく『どうしたいか』を聞かせてほしい」
「千聡は、どうしたい?」
「私は…」
怖かった。
他の多くの人のように、不死川さんに化け物を見る目で見られることが。
わずかに重なっただけのはずの
この日々が崩れ去ってしまうことが。
…それは、なぜ?
そうか
私は
「私は…っ不死川様の、お傍に、いたいです」
流れる涙のままに顔を上げると
お館様は穏やかに微笑んでいた
「うん。
行っておいで。」
「…はい…っ…」
涙で歪む星あかりが
幾重にも光って私の道を照らしてくれた
「ふたりとも、優しい子に育ったね」