第2章 心をさらったあなたへ
逃げるように自室に戻り
音も光も、全てを遮るようにきつく布団を被った。
眠れない夜はいつもこうする。
薄いこの一枚だけが、私を守ってくれる。
ここなら、大丈夫。何も怖くない。きっと。
「…ぅぅ…っ…」
気付かれてしまった
不死川さんに
知られてはいけなかった
知られたくなかった
「うぅ…っ…嫌い、嫌い、嫌い嫌い…!!!」
左袖をまくると現れる、波打つような青緑色と
それを囲む赤紫色の火傷痕に強く強く爪を立てた
『千聡走って!生きるのよ!!!』
(ーーーー嫌だ、嫌だよ…!おかあさん!おかあさん…!!!)
ーー気味が悪い。
ーーー化け物がうつる!
ーーーー近寄るな人殺し!!!
声が私を追いかけてくる
もがけばもがくほどうまく息ができなくて
まるで暗い海に引き摺り込まれるみたい
どんなに引っ掻いても叩いても、
淡く光を映す鱗には傷一つついてくれなかった
血が滲み始めた腕にきっちりと包帯を巻き、薄闇に沈む道を本部へと歩き始めた