第6章 熱に焼かれる
しのぶさんは杏寿郎さんの肩に担がれた私の存在に気が付いたのか「あらあら」と言っているのが聞こえる。柱に、しのぶさんにお尻を向けてしまってすみません。恥ずかし過ぎて、出来るだけ気配を殺すことに集中する。
「約束通りナオを連れて帰る!」
「はい、どうぞ」
「うむ!世話になった!」
そう言ってくるりと反転する杏寿郎さん。すると自然と私はしのぶさんの方へ向かう形になる。
「助けて下さい!」
思わずそう言ってしまった私に「無理ですね。諦めて下さい」と笑顔で即答されてしまう。終いには「お幸せに」とニコニコ手を振って見送られるものだから、私はもう杏寿郎さんに担がれ連れていかれる以外の選択肢しか残されていなかった。
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まさかのそのままの格好で煉獄家まで連れて帰られた。槇寿郎様や千寿郎さんに見られてしまうから降ろして欲しいとお願いしたが「2人とも今はいない!」と言われ一蹴されてしまった。相変わらず杏寿郎さんからは怒っている気配を感じ、それ以降喋っても貰えず私はこれからどうなるのかと不安で一杯になった。
連れて行かれたのは杏寿郎さんの部屋だった。杏寿郎さんの部屋に入ったのは片手で数えられる位しかないので変に緊張感を覚える。ようやく降ろしてもらえたと思ったらそのまま壁際まで追い込まれてしまった。
杏寿郎さんの猛禽類のような瞳が、私をじっと見つめる。
「‥怒ってますか‥?」
「怒ってなどいない」
いや、それのどこが怒っていないのか。そもそも怒っていたのは私で、謝ってもらいたいのも私だったはず‥。なのに何故、私がこんなにも追い詰められなくてはいけないのか。
「怒ってはいない。だが猛烈に焼いている」
杏寿郎さんのその言葉に、私は驚き目を丸くする。その間も杏寿郎さんはどんどん迫ってきて、体はもう密着してしまっている。
どうしようもなく恥ずかしい。
「君は俺というものがありながらあの隊士と2人で食事に行くつもりだったのか?」
一体どこから見られていたのか。とても気になったが、それ以上に杏寿郎さんのその棘のある言い方にカチンと来た。
「‥なんですかその言い方‥?私が浮気しようとしたとでも言いたいんですか‥?‥っ他の女性と口付けしてたのは杏寿郎さんじゃないですかっ!」
私のその言葉に杏寿郎さんは怯んだ様に見えた。
