第1章 終わりと始まり
村田さんは自分の''育手"を私に紹介すると言ってくれた。そして"隠''と呼ぶ頭巾を被った男女を呼ぶと荷造の手伝い、更に育手が住む場所へと私を案内してくれるよう取り計らってくれた。
「何から何までありがとうございます」
「お礼なんて良いんだ。実際この選択が君にとって本当に良いものなのか俺にはわからない‥」
村田さんは少し辛そうな顔をしながらそう言った。それでも私には仇を打つチャンスを与えてくれた事に対する感謝の気持ちしかなかった。
「それじゃあ俺はもう行くよ。俺ももっと強くなれるように頑張る‥だから君も頑張れよ。‥っと肝心の名前を聞いてなかったな。君の名前は?」
そう言えば名乗っていなかった事に今更ながら気づく。
「柏木ナオです」
慌てて名乗ったため少し早口になってしまう。
「柏木さんね。‥また必ず会おう」
村田さんはそういうと右手を差し出してきた。私はその手を取り固く握手を交わす。
「はい。必ずまた」
それから2年余り修行を積み、最終選別を突破した私は鬼殺隊士となった。任務をこなし、休暇になればひたすら鍛錬、合間を縫って親しくなった隠に妊婦を好んで食う鬼の事を知らないか聞いて回る日々を繰り返していた。
有力な情報も得られず、もしかしたらあの鬼はもう誰かが首を切ったのかもしれないと思い出していた。だからまさか任務の帰りにたまたま立ち寄った街で探し求めていた仇に会えるとは思ってもみなかった。
そう難しくない任務を終え藤の家まで向かおうと思ったが、あいにく近くに思い当たる場所もなく宿でも借りようと街の中を歩いていた時だ。女性の叫び声と今はもう慣れてしまった嫌な気配を感じ全速力でそちらへと向かった。
鬼がいると思われる路地に到着した私はまず状況を把握するためバレないように物陰から様子を伺った。
「いや‥っ来ないでっ!!」
女性は怪我を負った様子もなく無事である。ここは慌てず作戦を練ろう、そう思った。でもここで私の目に入ったのは女性が庇うように抱いている自身の大きなお腹。彼女のお腹はとても大きくおそらくもう間も無く出産を迎える頃だろう。