第1章 終わりと始まり
「‥助けてあげられなくてごめんな。俺がもっと早く来られたらこの女の人も助けられたのに‥」
どのくらいそうしていたのかわからない。気づくと先程の黒い服の男性が戻ってきており悔しそうに顔を歪めながら私を見ていた。
「‥あの化け物はどうなったんですか‥?」
「‥っごめん。あの鬼にも逃げられてしまったんだ」
「‥‥そうですか‥」
ギチギチと悔しそうに男性が刀の柄を握り締めている音だけが聞こえた。
「‥そのままじゃ可哀想だ。その人を弔ってあげよう」
いつの間にか夜明けが来ていたようで、外は明るくなり始めていた。男性は家の裏に穴を掘り、ハナエさんの遺体を丁寧に埋葬してくれた。私はただその光景をぼーっと眺めていることしか出来なかった。男性はハナエさんに向かって手を合わせ、それが終わると私の正面にやって来た。
「俺は鬼殺隊の村田だ。鬼殺隊っていうのは、さっき君たちを襲った鬼を殺す為に作られた組織なんだ」
「‥鬼?あんな恐ろしい生物がこの世に存在するなんて‥‥信じられない」
「あぁ。俺だって初めて鬼の存在を知った時は信じられなかったさ」
何もわからない私に村田さんは鬼殺隊のこと、そしてハナエさんを襲った鬼のことを教えてくれた。
「俺もまだ隊士になってからそんなに経ってなくてさ。まだまだわからないことだらけなんだけど、鬼を狩るために毎日必死に任務と修行の日々さ」
「‥その隊士には私にもなれますか?」
自然と出た言葉だった。村田さんはそんなに驚いた様子もなく、もしかしたらそう聞かれることを想定していたのかもしれない。
「君の気持ちよく分かるよ。俺も家族を鬼に殺されて仇を打つために鬼殺隊に入った。鬼殺隊にはそうやって隊に入った人間がたくさんいるんだ」
今まで普通に暮らしてきた中で、人を食う鬼がいて、それと戦う人達がいたなんて知る由もなかった。でも今は違う。姉と慕うたった1人の家族を奪われ、産まれてくるはずだった尊い命を奪われ、何もせずこのまま生きていくなんて選択肢があるはずない。
「お願いです。私を鬼殺隊に入れてください。‥姉の仇を‥どうしても取りたいんです!」
枯れたと思っていた涙がまた溢れてきた。
「‥本当は君みたいなかわいい女の子に鬼殺隊士になって欲しくない。でも君の気持ちは痛いほどよくわかる」
村田さんは困ったように笑っていた。
