第6章 熱に焼かれる
「‥ごめんなさい」
「謝る必要はありません。でもおそらく煉獄さんには大した足止めにはならないので、事情を話してくれると助かります」
しのぶさんに話したい。聞いてもらいたいのに、上手く言葉になってくれない。私がそんな事をしている間に、バタバタとこちらに近づいてくる足音と、「煉獄様!待ってくださいぃ」と杏寿郎さんを一生懸命引き止めようとする3人の声がする。
「やはり足止めは無理そうですね‥。会われますか?」
しのぶさんのその問いに、無言でフルフルと首を振る。私の気配を辿って来ているのか、杏寿郎さんの足音はどんどん近づいてくる。
「わかりました。私に任せてください」
そう言ってしのぶさんは部屋を出た。
「煉獄さん、おはようござます。そんなに急いで何かご用でしょうか?」
「うむ!騒がせてすまない!ナオが来ているだろう!連れて来てもらえるだろうか!」
もう本当にすぐそこまで来ていたようで、扉のすぐ向こうでしのぶさんと杏寿郎さんの話す声が聞こえてくる。思わず私は身を隠すように部屋の隅へ逃げる。
「いるにはいるのですが。今、彼女を煉獄さん会わせるわけにはいきませんね」
「む!なぜだろうか!」
「彼女が会う事を拒んでいるからです」
「だが俺はナオと話す必要がある!」
「煉獄さんはそうかもしれませんが彼女は違います」
「む!なぜだろうか!」
話が元に戻っている。
「ですから!」
しのぶさんがイライラしている様子が扉越しにひしひしと伝わってくる。
「彼女は今、相当動揺しています!その原因が煉獄さんにあるのであれば、医師として、友人として、会わせることはできません!」
しのぶさんがそんな風に自分を思っていてくれていたとは。死にかけの心に少しだけ精気が戻った気がした。その言葉に杏寿郎さんは何も言わない。
「何があったか、話を聞く事もまだできていません。ですから、少し時間を下さい」
「‥ナオはそんなに落ち込んでいるのか?」
「ええ、それはそれは、泣いて喋れないほど落ち込んでいるようですね。なぜでしょうか?教えてもらいたいものですね。ね、煉獄さん?」
扉の向こうから感じるドス黒い雰囲気が、今は物凄く心強い。涙も気づくと止まっていた。
「‥わかった。今日は帰る!だが明日また来る!」