第5章 隠せない隠さない
甘味とお茶の準備に台所に行くと、そこに組紐が包んである包みも一緒に置いてあった。
「これ、私が落としたのを杏寿郎さんが拾ってくれたものなんです。炎柱になった杏寿郎さんに贈り物をと思って」
「そうなんですね!通りで包み方が違うと思いました」
「お茶が終わったら渡したいので一緒に持っていっちゃいますね」
「はい!‥あの、ひとつお願いがあるんですが‥」
そう言って千寿郎さんは少し恥ずかしそうに目線を下げる。その様子がいつもと違い、年相応に見え可愛いなと思った。
「何でしょうか?」
「‥ナオさんともっと仲良くなりたくて‥敬語をやめてはもらえないでしょうか‥?」
恥ずかしいのか不安なのか、千寿郎さんは私を上目遣いがちに見て来る。あぁ。なんたる可愛さ。
「‥っそんなことであれば!喜んで!さぁ!杏寿郎さんがきっと待ってるから行こう、千寿郎さん」
「はい!」
千寿郎さんはお盆にのった湯呑みを。私は大量の甘味と、組紐の入った包みをそれぞれ持ち、杏寿郎さんの待つ部屋へと2人並んで向かった。
「兄上、お待たせしました」
「いや!待っていない!それにしてもこんなにもたくさん食べられるとは!どれを食べるか迷う!」
そう言えば、この大量の甘味は一体いくらしたのだろう。私が買ったあの2パックも決して安いとは言えない。なのに‥杏寿郎さんはこの量をひとりで‥。
「杏寿郎さん!私のせいでお店の商品を買うことになったんです!せめて‥半額‥払わせてください!」
「断る!」
即答。だからと言って直ぐ引き下がるわけにはいかない。
「でも‥私のせいで‥」
「断る!!俺はナオにお金では決して買うことが出来ないものをあの時既にもらっている。だからお金などいらない!」
お金では買えない物‥。あの時私はただ、馬鹿みたいに怒って泣いていただけなのに。
「でも‥」
「この話はこれでお終いだ!それとも俺は、今ここで何があったか説明しても良いんだぞ?」
千寿郎に知られても良いのか?と暗に問われ私は押し黙る。そんな私の様子に、師範は満足気にニコリと笑い私の頭をポンと撫で
「君が俺のために流してくれた涙、決して忘れまい」
と耳元でコッソリと囁いた。ボッと急激に顔に熱が集まる。
「うまい!」
そんな私を尻目に、杏寿郎さんは桜餅に手を伸ばしていた。