第5章 隠せない隠さない
「兄上、ナオさん、この度はおめでとうございます。僕は今までお二人を見てきて、早くこうなってくれればとずっと思っておりました」
いやまだおめでとうと言われるのには早すぎるのだけど‥、とは思ったが千寿郎さんがあまりにも嬉しそうに笑っているのでその言葉は飲み込むことにした。
「うむ!俺は直ぐにでも祝言をあげたい!だが愛しき人の思いを尊重するのも務め!一刻も早くナオの思いが遂げられるよう千寿郎も協力頼む!」
「はい!ナオさん、どうか兄上のことをこれからもよろしくお願いします」
丁寧に頭を下げる千寿郎さんにならい、私も千寿郎さんへ同じように頭を下げる。
「こちらこそ、よろしくお願いします。今まではお手伝い程度でしたが、これからは千寿郎さんに負けないくらい炊事洗濯頑張ります!」
「いえ。そんなに頑張られてしまうと、僕の仕事がなくなってしまうので‥程々にお願いしますね」
「‥わかりました」
そう言って微笑み合った。
「うむ!では先程買った甘味を食べるとしよう!千寿郎、お茶を頼んでも良いだろうか?」
「はい。直ぐに入れますね」
「あ、私も一緒にやらせてください」
「ありがとうございます。でも、兄上。何故あんなにたくさんの甘味を買ってこられたのですか?」
ぎくっ。そこは‥触れないで欲しい。
「あれはな」「あーっ!!ダメですダメです!!」
平然と答えようとする杏寿郎さんの口を慌てて塞ぐ。杏寿郎さんは何をするんだ、と言いた気に私をじっと見ており、千寿郎さんはそんな私の行動を不思議そうに見ている。私は杏寿郎さんの耳元に近づき
「あんな恥ずかしい事‥千寿郎さんには内緒にして下さい!」
「む?何故だ?」
「恥ずかしいって言ってるじゃないですか!」
「むぅ。君が俺のために泣いて怒ってくれたと、千寿郎に自慢したかったのだが‥」
ぐっ、と一瞬心が揺らぐ。だがやはり良い大人が店で騒ぎを起こし、泣いているのを杏寿郎さんに連れ帰られたとは言えない。
「‥やっぱりダメです!千寿郎さんには内緒にしてください!」
「‥仕方ない」
私は千寿郎さんに向き直り、「何でもないの」と笑って誤魔化した。察しの良い千寿郎さんは、それ以上話を掘り返して来ることはなかった。
ごめんね千寿郎さん。