第5章 隠せない隠さない
「これは俺と君の問題だ。父上は関係ない」
「そんなことありません!槇寿郎様も‥千寿郎さんも‥杏寿郎さんにとって大切な家族は、私にとっても大切なんです。だからお二人には必ず‥私が杏寿郎さんと共にあることを認めてもらいたいんです」
杏寿郎さんは目を瞑りながら腕を組み考えているようだ。何事にも早々に結論を出す杏寿郎さんが時間をかけ考えてくれている。それだけ真剣に私達の未来の事を思っていてくれているのだろう。
「うむ。君が存外頑固なことは知っている。だが俺も気が長い方ではない。待つのは長くても1年だ!それ以上は待てない!」
1年‥。きっと長いようであっという間だ。
「頑張ります!1年で今より階級を上げて、家のこともたくさん覚えて、槇寿郎様が安心して杏寿郎様を任せられるような人間になれるよう努力します!」
杏寿郎さんは私の決意表明を聞き、一瞬キョトンとした。けれど
「わはは!まるで俺が君に嫁ぐようだな!」
と、とても嬉しそうに笑い私の身体をぎゅっと強く抱きしめる。
「‥俺は柱だ!責務のために命を落とす事もある!だがそうならないよう最大限努力し、君との未来を守ると誓おう!」
ナオ、君を誰よりも愛しく思う。
こんなにも自分の名が特別に聞こえたことはない。私の杏寿郎さんを思う気持ちが全部伝われば良いのにと、私も強く抱き返した。
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「千寿郎!ナオは俺の許嫁となった!遅くとも1年後には夫婦となる!」
そう高らかと宣言した杏寿郎さんに、私は眩暈を感じ思わず壁に手をついた。
違う!いや、合ってるのか?いやでもやっぱりおかしい!
「ちょっと待ってください!なんか色々飛ばしている気がします!」
「む?そうだろうか?」
「そうですよ!まずはお付き合いからって言ったじゃないですか!」
「うむ!結婚前提のお付き合い、すなわち許嫁も同じだ!」
「そうだけど‥なんか違います!」
「よもや!何が不満なんだ!」
「不満とか不満じゃないとかじゃなくて‥」
ふふふっ。
堪えきれていない千寿郎さんの笑い声が聞こえる。あ、これ前にもあった気がする。
「‥すみません。お二人の掛け合いがあまりにも面白くて」
杏寿郎さんは気まず気に明後日の方向を向いており、一方私はひたすら壁を見ていた。