第5章 隠せない隠さない
「すまない!あまりにも君の言葉が強烈すぎて固まってしまった!」
それはどういう意味だ。嫌な想像が頭をよぎり、徐々に顔が下に向いて行く。
「‥やはり‥ダメですよね‥」
「よもや!そうではない!」
膝の上で握りしめていた私の手を師範が取る。
「柏木、顔をあげてくれ」
その言葉にゆっくりと顔をあげ、師範の顔を見る。私の大好きな猛禽類を彷彿させる目がこちらを真っ直ぐ見ていた。
「柱になったら君に気持ちを告げようと決めていた。それがまさか先を越されてしまうとは!不甲斐ない!」
師範の言わんとしていることがわかり、自分の頬が熱くなるのを感じる。恥ずかしくて目を逸らしたいのに‥逸らしたくない。
「俺も君を好いている!添い遂げるなら君以外考えられない!俺と生涯をともしてくれ!」
"生涯を共に"‥?
身体がブワーっと熱くなり、驚きすぎてもうこれ以上目が開かないってくらい目を見開いていると思う。
「わはは!君のその顔もとても好きだ!」
先程まで立場が逆だったのに、一気に形勢逆転された気分だ。
「あの‥お言葉は嬉しいのですが‥私と師範、お付き合いもまだですよね‥?添い遂げるっていうのは‥ちょっと‥飛びすぎでは‥?」
「む?何か問題があるか?」
「え‥だって‥私たちまだお互いのこと、あまり知らないですよね?」
「何を言う!一つ屋根の下で暮らす仲だろう!」
いや。そうだけど。そうじゃない。千寿郎さん、師範を止めてください。
「ま‥まずは、お付き合いから‥始めていただけないでしょうか‥?」
はて?私は何をお願いしているのだろうか?
「俺は直ぐにでも柏木を妻に迎えたい!」
そんなの無理!もちろん嬉しいけど!心の準備が出来てない!
「む?不満そうだな?」
「‥っ嬉しいです!凄く!もう夢みたいです!」
「そうか!ならば問題ないな!」
ニコッと微笑む師範に眩暈がする。
「‥っ無理です!師範のことは大好きです!でも‥急すぎですっ!!」
ズイズイと近づいて来る師範の顔。
「‥っ師範!近いです‥っ!」
「‥俺にも君に愛していると伝えさせて欲しい」
急にそんな甘い声出さないで!
恥ずかしすぎて、嬉しすぎて、私の思考は完全に停止した。成る程、さっきの師範はこんな感じだったのか。と、他人事のように思っていた。