第5章 隠せない隠さない
「僕も、苦しかったですが‥どちらかと言えば嬉しかったので、お気になさらないでください」
そう言って眉を下げ笑う千寿郎さん。
「‥でも‥すいません!私、買い物があるので少し出掛けてきますっ!」
2人の優しさが逆に居た堪れなくて、私は逃げ出すようにその場を去る。
「っ柏木!ちょっと待て!」
師範がそう言っているのが聞こえたが、自分の取った行動のあまりの恥ずかしさに脚を止めることができなかった。
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はぁ‥。思わず溢れる大きな溜息。自分の行動が信じられない。思い出すともうなんとも言えない気持ちになる。
だめだめ。一旦忘れて、師範への贈り物を探さなきゃ。
幸いお金は持ってきている。私はそのまま小間物屋へ向かうことにした。
「いらっしゃいませ」
気にはなっていたが、隊服で入るには敷居が高そうな小間物屋が一軒あった。師範に贈り物を、と考えた時に真っ先に思いついたのがこのお店だ。中に入ると、やはり想像していた通り素敵なものがたくさんあった。もらった人が負担に感じない手頃な値段で、尚且つ身につけられそうなもの。そう言ったものを求めて店内を見回していると、ある一角に目を惹かれる。そこには色とりどりの組紐が並べられていた。中でも真っ先に目に入ったのは、煉獄家男子の髪を彷彿とさせる赤と黄色の組紐。その組紐は他もの物と違ってふたつ置いてあった。
師範と千寿郎さんでお揃いだったら喜ぶかもしれない。
師範も千寿郎さんもきっと自分たちでお揃いのものを買おうとする感じではない。だからこそ良いかもしれないと思い、迷わずその二つを手に取った。
「ありがとうございました」
その辺で買う組紐よりはかなり値段は張ったがとても良いものが見つかった。丁寧に包んでもらった組紐を大事に抱え、さっきのお詫びも込めて千寿郎さんが好きそうな甘味も買って帰ろうと最近流行りの和菓子屋にも立ち寄ることにした。
時間帯もあって店内はあまり混んでおらず、自分の前に2組待っているだけだった。列に並び何を買おうかと並べられている品をじっくりと見ていると、自分の後ろに新たに入ってきたお客が並ぶ気配を感じた。
「お!美味そうだな!なに買うかなぁ」
「お前味音痴なんだから何食ったって一緒だろ。それより聞いたか?炎柱、とうとう代替わりしたらしいぜ」
