第5章 隠せない隠さない
だからその分私が、おめでとう、頑張ったねって言ってあげたい。
そうだ。師範に何かお祝いの品を送ろう。
よくよく考えてみると、今まで師範に何か贈り物をしたことはなかった。そういえば、師範が炎柱になった喜びですっかり失念していたが、任務を終えたら話を聞いてほしいとお願いもしていたんだと今更ながら思い出した。きっと明日以降、師範は柱としての任務が始まり今と比べ物にならないくらい忙しくなるはず。ならば善は急げだ。
急いで自室に戻り、稽古着から外行き様の着物へ着替える。この後、贈り物と一緒に師範に思いの丈をぶつけるんだ。髪も普段とは違う感じに下ろしてみるのも良いかもしれない。なんなら化粧も、普段は殆どしないが、少しいつもよりも気合を入れてしてみよう。
なんだかんだと準備をしていると、思ったよりも時間を食ってしまった。準備を終え、千寿郎さんに一言声を掛けて出かけようと千寿郎さんを探す。
千寿郎さんを探し廊下を歩いていると、廊下を曲がった先から師範と千寿郎さんが話す声が聞こえた。聞いてしまっては失礼だと思い、来た道を引き返そうとしたが、師範の言葉に思わず足が止まってしまう。
「お前は俺とは違う。お前には兄がいる。兄は弟を信じている」
その言葉に私の胸は締め付けられる。そんな事、そんな風に言わないで欲しい。それじゃあまるで、師範には誰もいないみたいじゃない。違う。違うよ。そうじゃない。私がずっと側にいる。
「頑張ろう。頑張って生きていこう。‥寂しくとも」
気付いた時には私の足は勝手に動いていた。
「む?」「え?」
膝立ちになり千寿郎さんを抱きしめる師範、それを抱き返す千寿郎さんを私は纏めて抱きしめていた。
師範の心は私が守るんだ。千寿郎さんのかけがえのない家族を私が守るんだ。そう思えば思うほど、腕には自然と力が入っていく。
「‥柏木、俺は嬉しいのだが千寿郎が苦しんでいる」
師範のその言葉にはっと我に帰る。師範に抱きしめられ、その上から私が力一杯抱きしめてしまったので、千寿郎さんはようやく息ができたと言わんばかりにプハッと師範の肩から顔を上げた。
「‥っすみません!ご兄弟の大切な時間に割って入ってしまってっ!」
自分でも自分の行動が信じられず身体がサーッと冷えて行くのを感じる。
「いや!先程も言ったが俺は嬉しい!気にする必要はない」
