第5章 隠せない隠さない
「さぁナオちゃん!煉獄さんと何があったのか教えてちょうだい!」
そう嬉しそうに聞いてくる蜜璃ちゃんに、私は昨夜あった出来事を正直に話した。
「やだやだ!煉獄さんったら大胆だわ!」
蜜璃ちゃんは大興奮。不思議なもので、一緒にいる相手が自分より興奮していると冷静になった。冷静になると、やはり師範が自分のことを弟子以上に思っていてくれてるかも、なんて考えは間違いなような気がしてくる。
「‥でもやっぱりどうしても信じられなくて‥」
「そんなことないわ!さっきだってあの煉獄さんの顔!あんな顔今まで一度も見たことないもの!私ね、煉獄さんって剣ばかりで色恋に全く興味がない人だと思ってたの!でもナオちゃんと2人でいるところを偶然見かけた時、あぁそうじゃないんだわって気が付いたの!それくらい煉獄さんとナオちゃんには他にはない空気を感じたの!絶対に煉獄さんもナオちゃんが好きだと思う!私、2人にその気持ちを大事にしてもらいたい!恋って人を幸せにするの!強くするの!私は殿方と両思いになった事がないから偉そうなこと言えないけど、折角届く距離にいるのに手を伸ばさないなんてもったいないわ!」
まるで自分のことのように必死になってくれる蜜璃ちゃんに胸の奥が暖かくなる。
「‥身寄りもなくて、外見だって特別良いわけでもなくて、剣もそこそこだし‥私で良いのかな‥」
その気持ちがどうしても、踏み出したいと思う脚を引き止めてしまう。蜜璃ちゃんは私の手を取り真っ直ぐとこちらを見つめる。
「ナオちゃん。それはナオちゃんが決める事じゃなくて、煉獄さんが決めることだわ。ダメだって勝手に決めつけたらそれこそダメよ!幸せは自分の手で掴み取らなくちゃ!」
私の幸せ。私の幸せってなんだろう。仇の鬼の頸を切り、それからは1人でも多くの人を救いたいと師範の元で強くなるために必死だった。でも今は‥師範の側で師範を支えたい。周りのことばかりでいつも自分のことは後回しにする師範を私が大切にしたい。辛い気持ちを笑顔の下に隠して前を向き続けるその強さを守りたい。師範が私にとって、誰よりも大切で愛しい人だと伝えたい。いつしか私の世界は師範でいっぱいになっていた。
「‥私は‥師範と一緒に‥生きて行きたいっ」
その言葉に自分の全てが込められていた。