第5章 隠せない隠さない
「む?俺の羽織を?確かに予備はあるが‥」
「それで良いです!むしろそれが良いです!」
それが良いです。
それが良いです。
それが良いです。
私は今、何を口走ったのだろうか。疲労で頭が回っていなかったのだろうか。昨日の師範の行動のせいで頭のネジがぶっ飛んでいたのだろうか。
助けを求めるように蜜璃ちゃんの顔をチラリと見る。蜜璃ちゃんは自分の口をその手で塞ぎ、キラキラした目で私を見ていた。
あ、ダメだ。今その手を話したらきっと叫び出してしまいそうなんだ。でも蜜璃ちゃん、もう嬉しそうな雰囲気がダダ漏れだよ。
次に千寿郎さんの顔をチラリと見る。なんとも言えない優しい顔で私を見ていた。もしかして千寿郎さんにも私の気持ちはバレているのだろうか。
最後に師範の顔を見る。出来れば見たくない。それでも口から出てしまった言葉を無かったことには出来ないので、意を決してそちらに恐る恐る目をやる。
師範は眉を下げ、まるで愛おしいものを見るような表情でこちらを見ていた。
もうダメだ。そんな顔で見られたら‥もう気持ちが抑えられない。
「っ厠に行ってきます!」
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縁側から離れた廊下でひとり、私は壁にもたれかかり頭を抱えていた。
どうしてあんなことを言ってしまったのか。どうしてあんな目で私を見るのか。
浮かんだ答えは一つ。私はもう師範への気持ちを抑えられない。そして、師範も私に弟子以上の気持ちを持っていてくれていると思う。期待するなって言う方がもう無理な話だ。
私は気持ちが落ち着くまでそこでやり過ごそうとした。けれど
「カァ!伝令伝令ィ!炎柱!カァ!柱合会議に至急向カエェ!」
烏の騒ぐ声を聞き、縁側へと踵を返した。
縁側に到着すると、師範がちょうどその場を離れようとしているところだった。
「師範!‥大丈夫ですか?」
烏の言葉から大体何が起こっているのか察しはついていた。最近炎柱様は以前にも増してお酒の量が増えたし、任務に出ていないこともあった。大方今日、柱合会議があるのに行かなかったのであろう。それを呼びに行く師範の気持ちを考えると胸が締め付けられるようだった。
「うむ!心配いらない。すぐに戻る!」
「‥はい」
千寿郎さんと、蜜璃ちゃん、そして私はそう言って炎柱様の部屋に向かう師範を見守る事しかできなかった。
