第5章 隠せない隠さない
「甘露寺だけずるいではないか!俺はそんな美味そうなものがあったことすら知らん!」
そんな事で怒るなんて。どうしよう。師範がものすごく可愛い。思わず笑みが溢れる。
「あの時は急に食べたくなって少ししか作らなかったんです。だから師範が帰ってくる前に全部2人で食べてしまって」
正確には蜜璃ちゃんがほとんど食べちゃったんだけど。
「むぅ。そうなのか」
「だから今回はみんなで一緒に食べるために、たくさんさつま芋と小豆を用意しましたのでご安心ください!」
たくさん食べる師範と蜜璃ちゃんがいても足りる量となると中々味付けが難しい。それでも美味しいと喜んでほしくて、味を確認しながら煮込んでいる最中に師範が帰ってきたのだ。
「そうか!それは良かった!それにしても良い匂いだ!少し味見させてはもらえないだろうか?」
そんな風に師範に聞かれたら断れるはずがない。
「ちょっと待ってくださいね‥」
まずは自分が小皿に盛り、急いで一口食べる。うん。美味しい。次に師範に食べてもらおうと、私が使ったものより少し大きい匙を出し煮物を掬う。その状態で小皿ごと師範に渡そうとした。渡そうとしていたのに師範は私の腕をガシッと掴む。
「ちょっ!溢しちゃうじゃ‥」
パクリ。
「うむ!うまいっ!」
食べた。これじゃあまるで私が食べさせてあげてるみたい‥。
ポカンと固まる私に、師範がさらなる追い討ちをかける。
「柏木、顔に小豆がついているぞ」
そう言って私の顔に手を伸ばし、あろうことか私の顔についていたと思われるそれもパクリと食べてしまった。
「うむ!こちらもうまい!」
ブワーッと顔だけでなく全身が熱くなる。
「‥っ何食べてるんですかっ!わざとですか!?わざとやってるんですか!?いくらなんでもそれは思わせぶりですよ!そんなことしたら女子はみんな勘違いしてしまいますよっ!」
そう慌てて言った私に、師範はまたムッとした表情を見せる。
「‥柏木は俺が誰にでもこういう事をすると思っているのか?」
「‥っそう言うわけでは‥」
でも、その言い方では‥まるで"私だけ"と言われてるみたいで‥。
いつもと違う師範の甘い空気に、私はもう爆発寸前だ。
「‥少しイジメすぎたな。今はまだ良い」
そう意味有り気に呟き、私をじっと見つめる。その目にはいつもと違う熱を感じる。
