第5章 隠せない隠さない
はっと気づいた時には蜜璃ちゃんの目はキラキラ輝いていた。
「やっぱりそうなのね!初めて見た時からそんな気がしてたの!」
「え!いや!あの‥今のはちょっと違くて!師範のことはあくまで剣の師として好きってことで‥」
我ながら取ってつけたような言い訳だなとは思う。そんな言い訳で残念ながらスイッチの入った蜜璃ちゃんは止められない。
「ナオちゃんたら照れてるのね!可愛い!大丈夫!師範には絶対言わないわ!私とナオちゃんの2人だけの秘密ね!」
もう諦めるしかない。
「‥蜜璃ちゃんには嘘つけないな。‥絶対に2人だけの秘密ね。じゃないと私‥ここにいられなくなっちゃうから」
相当情けない顔をしていたのだろう。蜜璃ちゃんはさっきの勢いが嘘のそうにシュンとした顔になってしまった。
「‥師範には気持ちを伝えないの?」
「‥無理だよ。私と師範はあくまでも師弟関係。伝えても困らせるだけだから‥」
「そんなことないわ!だって師範が私に向ける目と、ナオちゃんに向ける目は全然違うもの!私2人を見ているとキュンキュンが止まらないの!」
私には蜜璃ちゃんが何を根拠にそう言うのかがわからない。本当にそうだったらとても嬉しいが、残念ながらそう易々と信じられるような話ではない。
「‥本当にそうだったら良いな。でもね、私にとって今1番大切なのは師範を守れるくらい強くなることなの。だから‥今は見守ってて欲しいな」
蜜璃ちゃんは黙ってしまった。悲しませてしまっただろうかと顔を覗き込む。
「‥っ素敵だわ!ナオちゃん!それは愛よ!愛なのよ!私2人の愛を見守るわ!」
どうやら違ったらしい。
愛がどうのこうのはこの際置いておいて、見守ってくれると言う蜜璃ちゃんの言葉を信じ、この話をなんとか終わりにさせた。
そんなやりとりもあり、私が蜜璃ちゃんに嫉妬心を抱くことはなくなり、それ以上に知れば知るほど素敵な蜜璃ちゃんの人柄を好きにならないわけがなかった。
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そんな可愛い妹弟子は、修行に来てたった半年で最終選抜を突破しあっという間に煉獄家を去って行ってしまった。才能の違いを見せつけられたようで悔しい面もあったが、そんなもの人と比べてどうこうなる問題ではない。私は、私の出来ることを精一杯するまで。