第4章 赤く赤く
「‥着るものをかしてやれ」
「はい!」
炎柱様はそれだけ告げ行ってしまった。師範は私が落とした木刀を拾い、未だにボロボロ泣き続ける私の手を引いて屋敷の中へと連れて行ってくれる。
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空いている部屋へ押し込められ、それをした当の本人はどこかへ行ってしまった。
誰もいない部屋に1人。思い出すのはカナエ様の優しい笑顔。明日になったらまた会えるはずだった。なのに。
私は誰かと親しくなるべきではないんだ。カナエ様も私のせいで‥。もしかしたら師範や千寿郎さんもそうなってしまうかも‥。今すぐここを出て行かなくちゃ。
そう思ったらもういてもたってもいられず、自分がいるのがどこの部屋かもわからないのに戸開け家に帰ろうとした。
戸を開けるとその先には師範の姿。師範は突然飛び出してきた私に驚き、元々大きな目をいつも以上に見開いていた。もうそばに行ったらダメだ。反射的に逃げ出していた。
「柏木!待ちなさい!」
逃げ出したはず。なのに殆ど移動できないまま私の腕は師範に強く掴まれていた。
「今日は帰るなと言っただろう!どこへ行くつもりだ!」
「家に‥帰ります。‥もうここには‥来ません」
私のその言葉に腕を掴む力がギリギリと強くなる。
「っ!師範‥痛いです‥っ!」
「理由を言いなさい」
顔を見なくってもわかる。師範はとても怒っている。
「‥私がいるとみんないなくなるんです!側に居たいと、親しくなりたいと思った人はみんな!もう誰かが居なくなるのは嫌なんです!私のせいで!私がいるから!」
最後の方はもうほとんど叫んでいて、自分でも支離滅裂なことを言っていることもわかった。それでもそう思わずにはいられない。
師範は何も言わない。でも腕の力を緩める様子もない。
「言いたいことはそれだけか?」
沈黙を破ったのは師範だった。その声は先程私に理由を問うた時とは違い優しいものだった。
「うむ!柏木の気持ちはわかった。だが家に返すのも、弟子を辞めるのも認めん!」
ちっともわかってないではないか。
相変わらず師範に腕は掴まれたままで、あっという間にさっき飛び出してきた部屋に連れ戻された。
「そこに座りなさい」
先程のやり取りで師範から逃げようとしても無意味だということがよくわかったので、その言葉に素直に従う。