第4章 赤く赤く
これからどんな顔で師範の稽古を受けたら良いんだろう、なんて心配は全くの杞憂に終わった。そう、師範の稽古は厳しい。とっても厳しい。だから師範が1人の男性として好き‥なんて考えている時間は全くなかった。少しでも気が逸れたらまぁすぐ師範に気づかれ、激しく打ち込まれる、走らされる、回数を増やされると容赦がなかった。私にとってはなんともありがたいことだ。
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「師範、急なお願いで申し訳ないんですが、明日の昼過ぎは稽古を休ませてもらえないでしょうか?」
「む?それは構わない。だが柏木が自ら休暇を申し入れるとは珍しいな」
「実は花柱様からお誘いがありまして‥」
昨日待ちに待ったカナエ様からのお誘いがあった。師範との鍛錬はもちろん大切だが、カナエ様と時間が合うことなんて滅多にない。だからこのお誘いを断ったら今度はいつお誘いがあるかわからない。
「柏木は花柱と親しかったのか!それは初耳だ!」
「まぁ‥色々ありまして」
あなたへの恋心の話で盛り上がってるだなんて口が裂けても言えやしない。
「そうか!たまには羽を伸ばしてくると良い!」
「ありがとうございます!」
久々にカナエ様に会える。明日は蝶屋敷にお邪魔する前に、美味しい甘味を調達して行こう。
明日のカナエ様とのお茶会を想像し私は少し浮かれていた。
その直後だった。
「千寿郎!千寿郎はいるか!」
珍しく炎柱様が明るいうちから隊服を着て、急いだ様子で千寿郎さんを呼んでいた。
「はい!今参ります!」
どこかの部屋から千寿郎さんがパタパタと急いで炎柱様の元へ向かったのが伺えた。
「なにかあったのだろうか?」
「‥どうでしょうか‥」
こういう時、どうしても嫌な想像をしてしまう。
しばらくすると千寿郎さんがこちらへやってきた。
「すみません。今から街に花を買いに行ってきます」
「花?何かあったのか?」
「父上が‥葬儀で必要になるからと」
炎柱様の知人が亡くなってしまったのだろうか。
「そうか。気をつけて行ってくるように!」
「はい!行って参ります」
千寿郎さんを見送ると、今度は炎柱様がこちらへやってきた。
「柱合会議だ。今日は帰らん」
「こんな時期に?なにかあったのですか?」
「花柱が鬼にやられた」