第4章 赤く赤く
「師範のことが好きです‥。でも私は師範の弟子です。そんな感情を持ってしまうこと自体だめなんです」
師範に、名家の御子息に、身寄りのない、弟子という立場の私が恋心を抱くなんて‥烏滸がましいにも程がある。
私の言葉を聞いたカナエ様は頬に片手を当てながら悩ましげな顔をしている。
「そうねぇ‥私にはお家事情とかはよく分からないけど‥弟子が師範に恋心を抱いたらダメなんて誰が決めたの?誰かにダメって言われたの?」
カナエ様はさも不思議そうに私の顔を見ている。
「‥え?」
誰かに言われたとかそういう事はない。まぁ誰かとそんな話をする機会もないのだけれど。
「‥言われたことは‥ありません‥けど」
「なら何の問題もないじゃない!私はむしろ師弟関係で恋人同士なんて素敵だって思うけど」
師範と恋人同士‥もしそんな風になることができたらどんなに幸せかと一瞬想像する。あ、想像するだけでドキドキが止まらない。
「私たちって明日生きてるかもわからない毎日でしょ?だから自分が想う人の側で、その人と肩を並べて戦えるなんて素敵なことだと思うの。だから私は、ナオさんにせっかく気付いたその気持ちを大切にして欲しいと思うわ」
「カナエ様‥」
「勝手なことを言っているようでごめんなさいね。でも考えすぎず自分の気持を大切にしてあげて」
そう言って優しく微笑むカナエ様に胸の奥がじんわりと暖かくなった。まだこれから自分がどうするべきか、どうしたいのかはわからない。でも、師範へのこの恋心を持ってても良いんだと誰かに言ってもらえただけで私は救われた気がした。
「‥ありがとうございます‥」
「良いのよ。むしろこんな話をかわいい女の子と出来るなんて私とっても嬉しいの!こういうの"恋バナ"って言うのよね?」
「"恋バナ"‥ですか?」
初耳である。それにしてもカナエ様は見た目も然り、中身もこんなに可愛い方だったのか。相手は柱だと思い、今までなるべく距離を取ろうとしていたが、今回こんなにも個人的にお話ができるとは。もっとお話しがしたい。仲良くなりたい。
「私も‥カナエ様とお話しできて凄く楽しかったです」
「はぁ。残念だけど今日はもうすぐ任務の準備があってもう時間がないの。でもまたぜひお茶会と恋バナしましょうね」
「はい!喜んで!」
カナエ様の"心の治療"私には効果抜群だった。
