第4章 赤く赤く
頭にふれた師範の手に、心地よい師範の声に私の胸はもう気づかないふりなんて出来ないほど高鳴っていた。
「‥はい。行ってきます」
私は‥師範のことが男の人として‥好きだ。
———————————
「久しぶりね。元気だったかしら?」
カナエ様は相変わらずお綺麗で‥頬に傷を作って師範に叱られている自分とは大違いだ。
「はい。なんとかやってます」
自分がちゃんと笑えているか自信がない。
「それはよかったわ。最近は煉獄様のところでお世話になってるそうね。頑張ってるって評判よ」
話しながらもカナエ様はテキパキと処置をしていく。
「いいえ‥そんなこと‥。今日も叱られてしまいましたし」
「あらそうなの?はい、これで大丈夫よ。朝晩の2回、この軟膏を塗ってね」
「はい。ありがとうございます」
「女の子なんだから、顔に傷が残ったら大変よ。忘れずぬってちょうだいね」
「‥はい」
そのカナエ様の言葉に師範のことを思い出す。自覚してしまった師範への恋心。これからどうしていけば良いのかと考えているとなんとも情けない返事しか出てこなかった。
「そうね‥じゃあ今度は、こっちの治療が必要かしら?」
診察が必要だったのは頬だけのはず。一体何のことだろうと思い下げていた目線を上げると、カナエ様は自分の心臓の部分を指差していた。思わず「‥え?」と声が漏れる。
「何か思い悩んでるみたいに見えたのだけど‥私の勘違いだったかしら?」
カナエ様は優しい笑顔で私を見ていた。
「‥そんなに‥ひどい顔をしていたでしょうか?」
「そんなことないわ。ただ‥話を聞いて欲しそうに見えたから」
私はそんなにわかりやすかっただろうか。
私は今まで男性を好きになったことがない。ましてやその相手が弟子として稽古をつけてもらっている師範相手だなんて、私はこれからどうしたら良いのか。いや正確に言えばどうこの気持ちを隠していけば良いのか。私にはわからない。
「‥聞いてもらっても‥良いでしょうか?」
同年代の女性に話を聞いてもらえる機会なんて滅多にない。だから私はカナエ様に話を聞いてもらいたいと思った。
「もちろんよ!しのぶー!しのぶー!お茶とお菓子を持ってきてちょうだーい」
「え!?そんなお茶とお菓子なんて頂けません!」
「お茶会よお茶会」
カナエ様はニッコリ笑っていた。