第4章 赤く赤く
「ナオさんは包丁さばきが上手ですね」
「そんな!千寿郎さんと比べたらまだまだです」
千寿郎さんに頼まれた食材を切り、それを終えるとせめてと自ら買って出た味噌汁作りに取り掛かる。
料理はまぁ人並みにはできる。だってそうせざるを得ない環境で育ってきたから。ただその料理の味に自信があるかと言われたらそうではない。そんな私でも唯一、さつまいもの味噌汁だけは自信があった。つわりで食欲のないハナエさんもこれだけは食べてくれた。私にとっては大切なハナエさんとの思い出の味だ。
出汁を取りサツマイモとキノコと玉葱を火が通るまで煮る。火が通ったら一度火を消し味噌を投入する。味噌をときおえたら沸騰しないように再びゆっくりと火にかける。
懐かしい匂いだった。ずっと作るのを避けてきた思い出のさつまいもの味噌汁。師範と千寿郎さんに食べてもらいと思った。
オタマで少し掬い小皿に入れる。熱いのでフーフーと息を吹きかけると美味しそうに湯気が揺れる。飲める熱さになったの確認し味をみる。
うん。美味しい。あの時から変わらないあの味だ。
私の母が好んで使っていた味噌と、煉獄家の味噌の味が似ていたのか、慣れ親しんだ味の味噌汁が完成した。
「さつまいもの味噌汁ですか!兄上の大好物なんです!」
「大‥好物‥ですか‥?」
それはなんと。自信があったはずなのに一気に難易度が上がる。そして私の体温はサーッと下がる。そんな私の様子に気付くことなく千寿郎さんはニコニコしている。
「きっと兄上が喜びます。そろそろ此方も終わりますので、盛り付けに入りましょうか」
「‥はい」
不安だ。
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「わっしょい!」
師範の突然の大声に危うく持っていたお茶碗を落としそうになる。わっしょい?今はお夕飯を頂いているはず。なのになぜ"わっしょい"?私の頭の中はもう大混乱である。
「わっしょい!!」
トドメのもう一発に思わず縋るように隣に座る千寿郎さんの顔を見る。その顔に察しの良いであろう千寿郎さんがコッソリと耳打ちをしてくれる。
「兄上は大好物のさつまいもを食べると思わず"わっしょい"と叫ぶクセがあるんです」
「‥そうなんですね」
なんだそのクセは。
そんな私に気づく様子のない師範は箸を止めることなく、ものすごい速度で私の作った味噌汁を食べている。