第4章 赤く赤く
私には弟も妹もいなかったからその感覚が正しいものかわからなかったが、千寿郎さんは弟のようで可愛くて仕方なかった(男の子に対してあんまり可愛いと言ってしまうのは本人的には嬉しくないだろうが)。初めのうちは師弟関係にあるのだからきちんとした距離感を持っていなければ!なんて思っていたのに、千寿郎さんのお陰でそんな決意は早々に崩壊しつつある。
「うまい!このおはぎは実にうまい!」
「本当に!この餅米と甘すぎない餡子のバランスがなんとも最高です」
まさか自分がこんな美味しい甘味に出会える日が来るとは、煉獄家に来る以前の私には想像もつかない事だ。
「いい小豆が手に入ったので、餡子も手作りしてみました」
「え!?この美味しい餡子千寿郎さんの手作りなんですか!?」
千寿郎さんの「はい」という回答にもう私は大興奮だ。
「すごく美味しいです!美味しすぎて手が止まりません!千寿郎さんは天才です!」
言葉の通り私の手は止まらず、あっという間に頂いたおはぎは無くなった。食べ終わってからも美味しさが思い出されほぅっとため息が漏れる。
「あぁ‥食べ終わるのがもったいないと思うなんて産まれて初めて‥」
千寿郎さんはそんな私の様子をクスクスと笑いながら嬉しそうに見ている。
「うむ!千寿郎が作ってくれる甘味はもちろん、食事はとてもうまいぞ!柏木、今日こそ夕食を取って帰ると良い!」
いつもはお断りする夕食のお誘い‥正直にいうと私の心はとても揺れていた。こんなに美味しいおはぎを作る千寿郎さんが作った夕食‥是非とも食べてみたい。けれどもやはり"夕食を共にする"と言うのは弟子としてお邪魔させて頂いている立場上いかがなものか、という気持ちも拭えず「‥でも‥それは‥」なんて答えあぐねていると
「‥今日は‥とても良い魚が手に入ったんです‥。ナオさんにも食べていただきたいのですが‥だめでしょうか?」
「ダメじゃありません」
千寿郎さんのその言葉にいとも簡単に落ちた。
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あれ?なんで私夕飯をいただくどころか一緒に作ってるの?
夕食を共にするどころか気づくと私は煉獄家の台所でさつまいもの味噌汁を作っていた。煉獄家に女中さんは1人もおらず千寿郎さんが1人で全てやるというので気づくと「私にも何か手伝わせて下さい」と口にしていた。
