第1章 終わりと始まり
父を亡くしてから初めて自分の気持ちを理解してくれる人に会えた。心の奥底に沈んでしまっていた感情が浮かび上がってくるようなそんな感覚がした。
「‥っお父さん!どうして私を置いて死んじゃったの!どうして私を1人にするの‥っ!」
寂しい。辛い。悲しい。会いたい。
父を亡くして始めて涙を流した。
「そうよ!その調子よ!溜め込んでたもの涙でみんな流しちゃいなさい!」
そう言うハナエさんの大声も震えていて、顔を見るとボロボロ泣いていた。そのうち近づいて来たハナエさんにぎゅっと強く抱きしめられ、その温かい胸でわんわん泣いた。
どれだけそうしていたかはわからない。けれど泣きすぎて、お腹が空いて、久々に味のするご飯をハナエさんと一緒に食べた。
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「ご馳走様でした。はぁ。ナオちゃんの作ってくれたさつま芋のお味噌汁、とーっても美味しかったわ。ありがとう」
ハナエさんは満足そうに自分のお腹をポンポン叩いていた。
「私こそ‥ありがとうございます。ハナエさんのお陰で久々に美味しいご飯を食べることができました」
誰かと一緒に食べるご飯がここまで美味しいものだなんて初めて知った。1人ぽつんと過ごしていた部屋に自分じゃない誰かがいることがこんなに嬉しいことだなんて。お皿を洗う手も、いつもより軽く感じた。
「良かったらまた食べに来てください」
私がそう言うとハナエさんはキョトン、とした後何かを思い出したのかパタパタと私に近づいてきた。
「違うの違うの!決してお味噌汁をご馳走になりにきたわけじゃないのよ」
そりゃそうだろう。と笑いながらハナエさんの言葉の続きを待った。
「実はね、今日はナオちゃんにお願いがあってきたの」
「お願い‥ですか?」
今日初めて会った私に何のお願い事があるのか、私には全く検討もつかなかった。ハナエさんはそのお願いを口にするのを少し迷っているのかしばらく2人の間に沈黙が続いた。しかし意を決したように、ふーっと一回ため息を着くと私をまっすぐ見た。
「あのね、私のお腹にあの人との赤ちゃんがいるの」
お腹?赤ちゃん?
「っぷ!やだナオちゃんたら目がまんまる!かわいい!」
その言葉にほっぺが熱くなったような気がした。
「っもう!揶揄わないでください!それに笑い事じゃないです!」
「ふふっ。ごめんね!」