第4章 赤く赤く
「‥私もいつか、炎柱様のように心から誰かを愛する日が来たら良いなと‥そう思います」
私にはとても縁遠い話だけど。
なにも言わない師範に余計なことを言いすぎてしまったかと心配になる。恐る恐る師範の顔を見ると、普段は吊り上がった眉は下げられ、なんとも優しげな顔でこちらを見ていた。
初めて見るその顔にいつぞやと同じように心臓が大きく波打つ。
「‥っすみません‥出過ぎたことを‥」
顔に熱が集まっている気がする。
「いや!そんな事はない!君は優しい心の持ち主だ。そんな君を弟子に出来き、俺はとても光栄に思う」
‥師範は私を褒め殺そうとしているんだろうか?
師範の真っ直ぐすぎる物言いに、私の頭はもう限界を迎えた。
結局顔の熱は中々収まることがなく、そんな私の事情を知らない千寿郎さんに「お熱ですか?今日は鍛錬を控えたほうが良いのでは」と本気で心配されたのだった。
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「炎の呼吸壱の型 不知火」
私がようやく炎の呼吸が使えるようになったのは師範の弟子になってから2ヶ月ほど経った頃だった。任務に就く際は、鬼との命がけの攻防になる。したがってまだ使いこなせない炎の呼吸を使うより、慣れ親しんだ水の呼吸を使わざるを得ない。それもあって、中々水の呼吸のクセのような物が抜けなくて炎の呼吸の感覚が掴めなかった。そんな私に師範は、根気よく指導をしてくれ、挫けそうになる心を鼓舞してくれた。
あれだ感覚を掴むのに苦労したのに、一度コツを掴むとなんとも不思議なことに身体に炎の呼吸がとても馴染むことに気がつく。なんなら心地いいとすら思った。
「よし!その調子だ!やはり俺の思っていた通り君の使う炎の呼吸は美しいな!」
‥こんな感じで師範は私を相変わらず褒め殺す。いや、もちろん上手くできない時は厳しく指導されることもある。それでも、いやそれ以上に、もうど直球に褒められるもんだから慣れては来たものの私の頭は何度限界を突破しそうになったか数えきれない。
「ありがとうございます!」
けれどなんともない振りをする事はとても上手くなった。
「兄上、ナオさん、お茶とお菓子をお持ちしました。そろそろ休憩などいかがですか?」
「うむ!そうさせてもらうとしよう!」
変わったことといえば、千寿郎さんは私をナオさんと呼んでくれるようになった。
