第13章 暖かく和やかに
杏寿郎さんとの通話を終えた私は、嬉しさのあまり赤ちゃんに向かって
「パパがもう少しで来てくれるって。楽しみねぇ」
と自然と話しかけてしまうのだった。
コンコンと部屋のドアがノックされた後、
「ナオ!来たぞ!」
満面の笑みを浮かべた杏寿郎さんと、
「おめでとうございます!ナオさん」
これまた満面の笑みを浮かべた千寿郎さんと、
「杏寿郎。大声を出すんではありません」
と杏寿郎さんを注意しながらもニコニコとしている瑠火さんと
「……」
黙ってはいるが嬉しそうな様子が表情から容易に窺える槇寿郎さんが次々と部屋に入ってきた。
「みなさん!来てくれてありがとうございます。今寝ているところなのですが、どうぞ顔を見てやってください」
4人は私の言葉を聞くと、すぐさま私のベットの隣で眠っている赤ちゃんのそばによりじーっとその様子を覗き込んだ。そんな様子を目の当たりにした私は、
あの目力を4人分一気に向けられたら…私だったら飛び起きてしまいそう。
なんて関係ない事を1人考えていた。
「…杏寿郎と千寿郎の産まれた時によく似ているな」
「ええ。とても」
「そうなんですか?」
「俺もよくはわからないが、昨日先生達も同じ事を言っていた」
「…そうですね」
実は少しその事について不満に思っていた。もちろん愛する杏寿郎さんにそっくりな赤ちゃんは、もう目に入れても痛くないと思えるほど可愛いし愛おしい。それでも、
「腑に落ちません」
私のその言葉に4人の視線が赤ちゃんから私に向く。
「この子は十月十日私のお腹の中にいたんです。痛い思いをして産んだのも私です。なのに…なのにどうして…私の要素がひとつもないんでしょうか!?」
先生、鰯谷さん、他の助産師さん。みんな
ご主人にそっくりね
と言うのだ。念のためもう一度言うが、決して嫌なわけではない。それでも納得がいかない気持ちが拭いきれない。
「わかります。わかりますよナオさん。私も同じ気持ちを2度味わいました」
瑠火さんのその言葉に私は思わず
「ですよね!そうですよね!瑠火さんならわかってくれると思いました」
そう言いながら瑠火さんの手を取ってしまう。