第13章 暖かく和やかに
恐る恐る通話ボタンをタップし
「もしもし?」
と応えると
"もしもし?杏寿郎くんから連絡もらったんだけどもう産まれたんだって?おめでとう"
と母の嬉しそうな声が聞こえてきた。
「え?杏寿郎さんお母さんに連絡してくれたの?」
"そうよ!ついさっき連絡もらってビックリしたわ!初産なのにスピード出産だったんだって?"
「そうみたい…出産ってものすごく大変なんだね」
''ふふっ。そうね。ところでね、すぐに会いに行きたいのは山々なんだけど、お父さんとお母さん、今旅行で北海道に来てるの"
「え!?なにそれ!?狡い!」
"狡くないわよ。産まれるってわかってればキャンセルしてでも会いに行ったのに"
「ごめんね。まさかこんなに早く産まれるなんて私も思ってなくて」
"ふふふ。嘘よ。落ち着いたら会いに行くから今はゆっくり休みなさい"
「ありがとう」
"杏寿郎くんや、そっちのご両親にもよろしく言っておいてね。あ、美味しいお魚送るからみんなで食べてね"
「やった!楽しみにしてる!」
"それじゃあまたね"
「うん!また連絡するから」
通話を終えた私は、杏寿郎さんに
"私のお母さんに連絡していてくれたんですね。すっかり忘れてしまっていたので助かりました。それに、助産師さん達に挨拶してくれたと鰯谷さんに聞きました。すごく嬉しかったです。明日また杏寿郎さんが来てくれるのを楽しみにしています。大好きです。おやすみなさい"
とメッセージを送った。メッセージを送り終え、スマートフォンを枕の横に置き、私は鰯谷さんが持ってきてくれたおにぎりへと手を伸ばす。疲れた身体にいい塩梅のおにぎりがとても美味しくてあっという間に2つのおにぎりを食べ終えてしまった。おにぎりを食べ終えお茶をすすっていると
ブブッ
と私のスマートフォンがメッセージを受信したのか再び震える。枕の横から拾い上げ、画面を見ると、予想した通りメッセージの相手は杏寿郎さんだ。
"今家に到着した。ナオが俺の家族を大切にしてくれるように、俺も君の家族を大切にする事は当然のこと。俺も明日、君たちに会いに行けるのを待ち遠しく思っている。心より愛している。おやすみ"
そのメッセージを読み、私の心は不思議と安心感でいっぱいになる。そして急激に瞼が重たくなり、いつの間にか眠りの世界に落ちてしまったのだった。
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