第13章 暖かく和やかに
「ナオさん…大丈夫ですか?」
痛い。痛い。痛い。何この内側から来る痛み。昔散々鬼にやられたはずなのに、あの外傷的な痛みとは違う。全然違う!
「…大…丈…夫」
いいや。本当は大丈夫じゃない。
病院について1時間経った頃。私の陣痛の痛みは叫び出したいくらいまでになっていた。けれども千寿郎さんの手前そんな事は出来きず、ひたすら痛みに耐えるしかない。
お産を進めるためにと陣痛に耐えながらそこまで広くない部屋の中を歩き回ったり、時にはスクワットをしてみたり。
…っ来る!
何度目かなんてもうわからない位の痛みの波が来た時、
ガチャッ
「っナオ!」
「…っ杏寿郎さん」
今朝玄関で見送ったそのままの姿の杏寿郎さんの姿がそこにあった。
その姿を見た瞬間、
「…痛い…痛いんですー!」
煉獄家で1人痛みに耐えていた頃から張っていた緊張の糸がプッツリと音を立てて切れ、ブワーっと目から涙がこぼれ落ちて来る。杏寿郎さんはそんな私に駆け寄り
「遅くなって本当にすまない!千寿郎、ナオに着いていてくれてたこと心から感謝する」
泣きじゃくる私を抱きしめながら、千寿郎さんにそう言った。
「いいえ。ぼくはただ見ていることしかできなくて…」
「そんな事はない。千寿郎がナオのそばにいてくれると思ったから俺は安心できた!だがここからは兄が変わろう!」
私はそんな兄弟の会話を聞きながらも、杏寿郎さんにしがみ付き痛みの波に耐えていた。杏寿郎さんの腕をぎゅっと強く掴んでいたのでおそらく痛かったろうに、そんな私を杏寿郎さんは文句も言わずに抱き返してくれていた。
「家まで送ってやりたいところだが、俺はナオのそばを離れたくない。悪いがタクシーを呼んで帰ってもらっても良いだろうか?」
「もちろんです。もう間も無く父上も母上も帰ってくる予定の時間ですので、家で知らせを待っています」
痛みの波が去り、私は杏寿郎さんから腕を離し千寿郎さんの方へと向かった。
「…一緒にきてくれてありがとう。本当はこのままいて欲しいけど…初産は時間がかかるって言うし、流石に何時間も待っててもらえるのは気がひけるから…」
「いいえ、いいんです。ナオさん、すでに十分頑張ってくれている貴方にこんな事を言うのは憚れますが…頑張って下さい」