第13章 暖かく和やかに
電話の向こうからは"はぁ"と、大きなため息が聞こえ、
「お前なァ。お前は良くっても煉獄はそうじゃねぇんだよ。嫁が頑張って自分の子を産もうとしてんだ。側にくらいいさせてやれやァ」
私に向かい呆れた声でそう言った。
「でも…仕事を中断させて来てもらうなんて…良いんでしょうか…」
「それはお前が決める事じゃねェ。とにかく煉獄を捕まえたらすぐ帰るように伝える。お前も頑張れよ」
「っはい!ありがとうございます!」
「千寿郎」
「はい!」
「煉獄が行くまで、お前がそいつのこと励ましてやるんだぞォ」
「はい!もちろんです!」
その時、外から車の音が聞こえてきた。
「タクシーが到着したようです。兄上のこと、よろしくお願いします!」
「任せろ。じゃあな」
「はい!」
そう言って千寿郎さんは通話を終了すると、
「荷物はぼくが持ちます。行きましょう」
と、普段は下がりがちな眉をキリリと上げてそう言った。
「うん。よろしくお願いします」
なんだか小さな杏寿郎さんが側にいてくれるような気がして(と言っても身長差はもうほとんどないが)すごく安心した。
病院に到着し、申請していた通り個室へと案内された。千寿郎さんに部屋の外で待ってもらい内診をして貰ったが子宮口はまだ2センチほどしか開いておらず、この痛さがいつまで続くのか、どれ程強くなるのかとゾッとした。
助産師さんと入れ替わりで千寿郎さんが病室に入って来ると、
「兄上から連絡が来ました!1時間もしないうちにこちらに来れるそうです」
「そうなの?良かったぁ」
本音を言うと、杏寿郎さんに側にいて欲しかった。もちろん千寿郎さんが役不足とかそう言う意味ではない。けれども、私にとって杏寿郎さんは特別で代わりなんて絶対にいない。
「でも、まだ子宮口2センチも開いてないんだって。先は長そう」
「陣痛の痛みは全然わかりませんが、兄上が来るまではぼくがナオさんを支えます!なんでも言って下さい!」
「ふふっ。ありがとう。頼もしいおじさんですね」
私はそう言ってお腹を撫でた。
この頃までは良かった。陣痛の合間に喋る余裕もあったし、食べたりすることもできた。
けれども
え?なんで?
と聞きたくなるほどあっという間に痛みは強まり、陣痛が遠のく間隔は短く、痛みの間隔長くなった。