第13章 暖かく和やかに
電話の向こうから、微かに不死川様と思わしき声が聞こえてくる。
「ナオさんが何度か兄上に電話を掛けたようなのですが繋がらなかったようでこちらに掛けさせていただきました。兄上を電話に出していただく事は可能でしょうか?」
そう千寿郎さんが話をしている間に、
「…っ…きた…」
再びやってきたお腹の痛みにグッと顔を顰めてしまう。
「っナオさん!大丈夫ですか!?」
千寿郎さんはスマートフォンを床に置くと、私の背に慌てて手を当てた。
"おいっ!どうした!"
床に置かれたスマートフォンから、不死川様の怒鳴り声が聞こえたので私は深呼吸を繰り返し痛みに耐えながら
「…っ千寿郎さん…スピーカーに…して…もらえますか…?」
と、千寿郎さんのスマートフォンを指差しながら言った。
「はい!」
千寿郎さんは私の背中から手を離す事なくスマートフォンを取ると、画面をいじり通話をスピーカーに切り替えた。
「何があったんだァ!」
切り替えた途端に聞こえる不死川様の怒鳴り声に、千寿郎さんの肩が大きく上下する。
「…不死川様…柏木です…」
「柏木か!?どうした!?大丈夫か!?」
「…もう少しで…痛みが引くと思うので…少し…待って…ください…」
「ナオさん陣痛が来たんです!」
「ああ!?陣痛だ!?今何分間隔だ!?」
え?不死川様、そんなこと聞いてくるの?
不死川様からの"何分間隔だ"という質問が意外すぎて、痛みに耐えながらも私は心の中で思わず突っ込んでしまう。
「10分間隔です!今タクシーが迎えにくるのを待っているところで、ぼくがナオさんと一緒に行きます!兄上に!兄上にこの事を伝えて下さい!」
「っおい!煉獄の野郎はどこにいる!?…あぁ!?会議室で業者と打ち合わせ中だァ!?んなもん冨岡にでもやらせておけェ!柏木に陣痛が来たって今すぐに伝えろォ!!!」
そんな会話をしている間に、痛みは遠のいて行った。
「不死川様。私はまだ大丈夫です。千寿郎さんが一緒にいてくれるのであれば頑張れます。きっとすぐには産まれないので、杏寿郎さんには仕事が終わってからで構わないので病院に来て欲しいとお伝え下さい」