第4章 赤く赤く
「柏木ナオと申します!縁あって杏寿郎様に弟子にしていただきました!立派な炎の呼吸の剣士になれるよう精進させていただきます!」
私の挨拶に炎柱様は読んでいた書物から一瞬目を離し、こちらを見る。けれどもすぐ興味なさげに書物へと目を戻された。
「杏寿郎の弟子になるなど‥しょうもない。どうせお前ら大した才能もないんだ。さっさと鬼殺隊などやめてしまえ」
そう言い放つ姿が何故かいつかの父の姿とダブって見えた。こっそり仏壇の前で泣いていたあの姿と。
「‥はい!才能はありません!けれども炎の呼吸の剣士として恥ずかしくないよう精一杯頑張らせて頂きます!」
そう言い放つ私に炎柱様は驚いたように顔を上げ再びこちらを見た。横に座っている師範からも視線を感じる。
「それでは。稽古がございますのでこれにて失礼させて頂きます」
私の態度がよっぽど意外だったのだろう。炎柱様はポカンとしておりそれ以上なにも言われなかったので早々に部屋を退室させてもらった。
「では、俺も失礼します!」
私に続き師範も慌てて部屋を出てきたようだ。
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「失礼すぎたでしょうか?」
今になってあんな態度を取ってしまったことが不安に思えてきた。
「いや、そんな事はない!だが予想外ではあった」
そう思われても仕方がないだろう。でも私が炎柱様に抱いたのは怖いとか近寄り難いとかそんな感情ではなかった。
「‥師範の話を聞いて、私の父を思い出しました」
師範はじっと私を見て次の言葉を待っている。
「私の父も、妻を‥私の母を病気で亡くしています。父はたまにこっそり泣いている時もありましたが、基本的には私に寂しいとか辛いとか話してくれました。だから私も母を亡くした悲しみを父と共有し、支え合うことができたんだと思います。その父も事故で亡くなりましたが」
「それは初耳だな。この間はそんなことは言っていなかっただろう」
私はあの時、姉のよう慕っていた人を鬼に食われ殺されたとは話したが、両親については詳しく話さなかった。
「入隊の経緯とは関係なかったので‥。まぁ話は戻りますが‥きっと炎柱様はお強い方だから自分の悲しみを人に話せないんです。そしてその悲しみは本人にしかわかりません。だからお酒に逃げたくなる気持ちもわかるんです‥」
だってそこにしか縋れないから。
