第13章 暖かく和やかに
「…杏寿郎さん。私…とんだにぶちんなんでしょうか…?」
わりと他人の感情には敏感な方だと思っていた。誰が誰を好いているだとか、気にかけているだとか予想した事は大体合っていたはずなのに。
「いや。あの2人は特殊だろう。不死川は他者に自分の胡蝶先生に対する好意をバレないようにしていたし、胡蝶先生はいつもあのような感じ故、察する事は容易ではない。俺も宇髄に言われるまでは気が付かなかった」
「…そうなんですね。今度、カナエさんに詳しく聞かないと!」
「そうすると良い。ほら、そろそろ家に入ろう。そんな格好で外にいて、身体を冷やしてしまったら大変だ」
そう。私は結局、あのままパジャマ姿のまま帰ってきた。杏寿郎さんが着ていたカーディガンを私の肩に掛けてはくれているものの、夜が深くなればなるほど気温は徐々に下がってくる。
「はい。…家出するなんて言っておいて、半日も経たずに帰ってくるなんて…ちょっと入るのが恥ずかしいです」
「そんな事はない。特に千寿郎はナオのことを心配していたからな。起きて待っているとメッセージが来ていた故、顔を見せてやって欲しい」
「そうなんですか?千寿郎さんには杏寿郎さんをお説教してくれたお礼を言わないと!」
そう言って私が揶揄うように杏寿郎さんを見ると、眉を下げ困ったように笑いながら
「それは勘弁してくれないか?」
と言った。
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あっという間に11月に入り、職場を退職した私は毎日のんびりと過ごしていた。社会人になってから、こんなにものんびりと穏やかに過ごすのは初めてで、こんなにも日中何もしなくて良いのだろうか?と心配になってしまう程だ。けれども瑠火さんが
"産まれたら寝れない、休めない時間が嫌でも来ます。今のうちにのんびりしておくのもナオさんの大事な努めです"
とお言葉を頂いたので、その言葉に存分に甘えさせてもらう事にした。
「はい。杏寿郎さん、今日のお弁当はさつまいもの炊き込みご飯ですよ」
「何!?本当か!?それは昼まで待てそうにない!」
「ふふっ。そう言うと思っておにぎりも準備してあります」
「なんと!それはとても嬉しい!」
大きなお弁当とおにぎりが2つ入った袋を杏寿郎さんに渡すと、目をキラキラと輝かせてその中身を覗いている。