第13章 暖かく和やかに
杏寿郎さんの胸に顔を埋め、スーッと深呼吸をすると、求めていた杏寿郎さんの匂いに包まれ、私の心は嘘みたいに安らいだ。
「おい。解決したんならいつまでも人の家でくっついてねぇでお前ら早く自分の家に帰れェ」
そう言って杏寿郎さんが開けっぱなしにしていた玄関から眉間に皺を寄せ顔を出したのは不死川様に、
「お前らなぁ、高校生じゃねぇんだから喧嘩くらい地味に2人で解決しろよな」
心底面倒だと言う顔をした宇髄様だ。
「まぁ、そんな意地悪言ったらダメよ?」
いつの間にかリビングにいたはずのカナエさんも私のそばに立っていた。
杏寿郎さんは私の身体を解放すると、カナエさんに身体を向け
「ナオを家に置いてくれた事、心より感謝する。母上がここにいる事を把握していたようで、心配はいらないと散々言われていた事にようやく納得がいった」
「いいえ。私はお昼からナオさんと一緒に過ごせてとても楽しかったわ。もう帰ってしまうのは残念だけど、ナオさん、煉獄先生がいなくてとても寂しかったみたいなの。だから家に帰ったらたくさん甘やかしてあげてちょうだい」
「…っちょ…カナエさん!」
私にとってとんでもなく恥ずかしい事を平然と暴露してしまうカナエさんに、大慌てしながら近づくと
「さ、帰ってゆっくり寝たほうが良いわ。また今度、寂しくないようにちゃんと準備して泊まりにきてね」
そう言って私が置きっぱなしにしていた鞄を手渡してくれた。
「…カナエさん…ありがとうございました。今度、お礼を持って遊びに来ますね」
「ほら。帰るぞォ」
「全く世話の焼ける夫婦だぜ。邪魔したな」
そう言うと、不死川様と宇髄様はさっさと行ってしまう。
「そんなの良いのよ。また遊びにきてね」
そう言って手を振るカナエさんに手を振りかえし、杏寿郎さんに手を引かれ私はカナエさんのお家を後にした。
不死川様の車で家まで送ってもらった杏寿郎さんと私が煉獄家に辿り着いたのは10時半を過ぎた頃だった。
「じゃあなァ。もう喧嘩して家出なんかすんなよ」
「世話をかけてすまなかった。もう同じ過ちは犯すまい」
「頼むぜ。お前の嫁さん心配すんのは、前世だけで十分だっつうの」
「む?宇髄はそんなにもナオの事を気にしてくれているのか……渡さないぞ?」
「いらねーよ!」