第13章 暖かく和やかに
「冷静になって考えたら、そんなに腹を立てるようなことでもなかったし、爆発する前にもっと早く杏寿郎さんに自分の気持ちを伝えれば良かったんです…」
「…ひとりで溜め込んでしまうのは、確かにあまり良いこととは言えないわね。でも、その気持ちも踏まえて、これからきちんと煉獄先生とお話しすれば良いのよ」
「でも私…杏寿郎さんに"赤ちゃんさえ無事に産まれて来れば私の事はどうでも良いのか"なんて…ひどい事を言ってしまいました…」
あの時の、顔を歪め、傷ついたような、それでいて怒ったような杏寿郎さんの顔が頭から離れない。
「…私…杏寿郎さんを傷つけてしまった…杏寿郎さんに嫌われたら…どうしよう…」
知らぬ間にボロボロと涙が溢れ、私のパジャマのズボンをどんどん濡らして行く。
「あらあら。そんなに泣かないで。心配いらないわ。煉獄先生は絶対にナオさんを嫌いになったりしない」
そう言ってカナエさんはテーブルに置いてあるティッシュを数枚取り、私の涙をポンポンと優しく拭き取ってくれる。
「ね?あんまり泣いていると、お腹の赤ちゃんも心配してしまうわ」
スンスンと鼻を啜りながらお腹に手を当てると、その手の温もりが伝わったのか赤ちゃんがポコンと一回お腹を蹴った。
「…はい…」
私が力無くそう答えると
ピンポーン
と来客を告げる音が部屋に響く。
「あらあら。まさかこんなに早く来るなんて、流石ね」
カナエさんがソファーから立ち上がり、インターホンの応答ボタンを押し
「はーい」
と可愛らしい声で答えると、
"俺だァ"
「どうぞー。上がってきてちょうだい」
聞き覚えのある声が私の耳に届いた。
「カナエさん…今のって…不死川様…ですか?」
私が首を傾げてそう聞くと
「ふふっその通りよ。でも、不死川くんはオマケみたいな物で、メインは煉獄先生よ」
「…っ!」
カナエさんはニッコリと微笑みそう答えた。
「…杏寿郎さんも…いるんですか?」
「ええ。煉獄先生、ナオさんの事を探し回っていたみたいでね。なかなか捜すのをやめないから、不死川くんと宇髄先生が捕まえて…って言ったら悪いわね、一緒にいてくれたのよ」
そんなまさか。私は知らぬ間に、不死川様と宇髄様まで巻き込んでしまっていたのか。
その事実に、身体がサーッと冷たくなった気がした。