第13章 暖かく和やかに
私…杏寿郎さんを悲しませて、瑠火さんを、カナエさんを巻き込んで…一体何をやっているんだろう。
そんな自分が情けなくて、ぐっと胸が苦しくなった。けれどもそんな私をまるで励ますかのように、赤ちゃんはポコポコと私の中で元気に動き回っている。
時計を見ると今はまだ10時。着替えてこれから駅に向かっても、まだ終電には十分間に合う。
やっぱり帰ろう。
膝掛けを畳んでテーブルの上に置き、私はカナエさんのいる隣の部屋のドアを"コンコン"とノックした。
「はーい。開けて大丈夫よ」
カチャリとドアを開けると、机に向かっていたカナエさんが椅子ごとクルリと私の方を向く。
「どうかしたかしら?」
服の裾をギュッとつかみ
「…私…やっぱり帰ります。巻き込んでしまって…ごめんなさい」
私が頭を下げながらそう言うと
「あらあら。私は全然構わないのよ?…それとも、煉獄先生に会いたくなっちゃったのかしら?」
「…っ!」
カナエさんはそう言って微笑んだ。
図星をつかれてしまい、私の目が左右に忙しなく動く。
「…どうして…わかるんですか…?」
「ふふふっ。だってナオさん、煉獄先生のこと大好きでしょ?」
ブワーっと私の頬に熱が集まる。
理由としてはあまり的を得ていない気もするが、あながち間違いではない。カナエさんは立ち上がると、私の方に歩み寄り
「喧嘩の理由を教えてもらっても良いかしら?」
と私の両手をその手で取りながら言った。
「…はい」
「じゃあ、あっちのソファーでお話をしましょう。あ、帰りのことは心配しないで。私に任せてちょうだい」
任せろって…どう言うことだろう…?
そう思ったが、これ以上カナエさんの手を煩わせるのははばかれたので、私は手を引かれるまま2人掛けのソファーへと座った。
「それで、どうしてナオさんと煉獄先生は喧嘩になってしまったの?」
カナエさんはそう言って首を傾げる。
「…杏寿郎さん、毎日毎日私の予定を聞くんです。どこに行く、何をする、いつ帰る。口を開けばお腹の子が心配だ、何かあったらどうするって…私が杏寿郎さん無しに出掛けるのもあまり良い顔をしてもらえなくて…今日も…何時に帰るのかって…」
「あらまぁ。それは確かに嫌ねぇ」
カナエさんの眉はいつもよりもほんの少し下がっており、実に嫌そうな顔をしていた。