第13章 暖かく和やかに
カナエさんの家は、女子会をしたカフェの二駅先にあり、鬼滅学園からそう遠くない場所に位置する、以前に私が住んでいたアパートと違ってセキュリティが厳重なマンションタイプの物件だった。瑠火さんに、カナエさんの家に泊めてもらう事を伝えると
"そうですか。こちらの事は気にせず楽しんできてください"
と杏寿郎さんについてはいっさい触れていない返事が来た。きっと、私を気遣っての事だろう。
私は瑠火さんに明日の午前中には帰る旨を伝え、再びスマートフォンを鞄の奥底にしまった。
デリバリーで頼んだピザを2人で食べ、お風呂を頂くと、あっという間に時計は9時を回ってしまった。
「ごめんなさいねぇ。来週の授業の準備があって少しお仕事をしなくちゃならないから、テレビでも観ててもらって良いかしら?」
「はい!私の方こそ、急にお邪魔させてもらってありがとうございます。実は、一人で外泊するの不安な部分もあったんです。だからカナエさんの家に呼んでもらえてとても安心しました」
「うふふ。私はいつでも歓迎よ」
そう言うとカナエさんさんは隣の部屋に行ってしまった。
1人でテレビを見ていると、ふと急に寂しさを感じる。カナエさんの部屋は良い匂いがして、暖かくて、お借りした膝掛けもふわふわでとても居心地がいい。それでもどうしても足りないものがる。
「…杏寿郎さん…」
いつも私を包んでくれる、大好きな杏寿郎さんの匂いと、杏寿郎さんの存在を感じられるものがここには何もない。杏寿郎さんと再会してから、こんなにも長く連絡を取らず過ごしたことは初めてだった。もちろん杏寿郎さんが出張に出てしまったり、修学旅行の引率がある時に連絡を取れないことはあったが、それと今では状況が違うし、家にいればなにかしら杏寿郎さんを感じられる物が側にあった。通知OFFにしていたメッセージアプリを開くと
"どう言うことだ?"
"頼む電話に出てくれ"
"どこにいるんだ?"
"一言でいい。返事をくれ"
"ナオに会いたい"
と杏寿郎さんからのメッセージが。
杏寿郎さんに会いたい
ほんの数時間前まで、会いたくない、話したくもないと思っていたはずなのに。一度そう思ってしまうと、もうダメだった。今すぐ杏寿郎さんに会いたい。会って、その温もりを感じたい。心地よいその声が聞きたい。