第13章 暖かく和やかに
私はぐずぐずと鼻をすすりながら事のあらましを瑠火さんに話した。
話を聞き終えた瑠火さんは、ふぅ、と一度ため息をつき、千寿郎さんがいれてくれたお茶をひと口口に含むと
「親子とは似るものですね」
と困ったように笑いながら言った。
「…もしかして瑠火さんと槇寿郎さんも同じような事で喧嘩を?」
「ええ。ほとんど同じ理由で」
瑠火さんは飲み掛けの湯呑みをじっと見ながら、その時の事でも思い出しているのか微かに微笑んでいた。
「杏寿郎はあの人に似て少々心配性すぎる節があります。…いいえ、ナオさんのことに関して言うと、杏寿郎はそれ以上と言えます」
瑠火さんのその言葉に私の顔からは苦笑いが溢れる。
「今回のことは、私にも原因があります」
「っそんなことありません!」
「いいえ。あの日私がナオさんにお醤油を買って来るように頼まなければ、杏寿郎もここまでナオさんを心配することにはならなかったでしょう」
「あれは…事故です!瑠火さんのせいではありません!」
「…ありがとうございます。ですが、やはりあの時の事が今回の発端のひとつであることは確かです。…どうか私に免じて、杏寿郎を許してやってはもらえませんか?」
瑠火さんのその言葉に頷きそうになる。けれども、どうしても今のこのモヤモヤとした気持ちをなかったことには出来そうにない。
「…私…どうしたら良かったんでしょう…」
膨らんだお腹に手を当て目をつぶると、お腹の中で元気に動く杏寿郎さんとの赤ちゃんの存在を強く感じた。
「家出してみてはいかがですか?」
「……家出…ですか?」
思わぬ瑠火さんの提案に、私の口がポカン開く。
「ええ。家出です。私は3日程、家出しました」
なんと意外な。家出をする瑠火さん。それに慌てる槇寿郎さん。そんな姿を想像すると、泣いていたはずなのになんだか笑えて来た。
「…家出をして、どうでしたか?」
「とても楽しかったです。それにスッキリしました」
瑠火さんの顔を見ると、言葉の通りとても楽しそうな表情を浮かべており、私も"家出をしてみたい"と思った。
「…したいです。いいえ、します!家出!」
私が両手に握り拳を作り、高らかに家出宣言をすると
「行ってらっしゃい。ただし、滞在場所が決まったら必ず私に連絡をするように」
「はい!」