第13章 暖かく和やかに
元々心配性だった杏寿郎さんの気持ちに拍車がかかったのは、それからだった。
仕事がある日はまぁ良い。
今日はどんな仕事をするんだ?
今日は何時に帰るんだ?
必ず聞かれる。そして私の答えはいつも同じ。
受付と事務処理ですよ
帰る時間はいつもと同じですよ
テンプレート化していた。
問題は休みの日だ。特に杏寿郎さんと一緒に過ごせない日。
どこかに行くのか?
何をするんだ?
誰と会うんだ?
お決まりのように毎回聞かれる。私も最初の内はあんな事もあったし仕方がないと思っていたし、いずれ落ち着くだろうと軽く考えていた。加えて杏寿郎さんに全く悪気はなく、ただ純粋に、本当に私の身を案じてくれていたことも十分理解していた。けれどもだ。それが1ヶ月も続くと、いくら悪気がなく、ただ心配してくれているだけと理解していても、ストレスが溜まって来る。例え相手が心から愛する杏寿郎さんだとしてもだ。
その日は久々に、蜜璃ちゃん、しのぶさん、カナエさんとランチをする約束をしていた。その事はもちろん事前に杏寿郎さんに相談してあったし、3人が一緒であれば問題ないだろうと思っていた。
それなのに。
「その集まりは何時に終わるんだ?」
そう聞かれただけ。第三者が聞いたら別にごく普通の質問だ。けれどもその時、自分の中で溜まりに溜まったものが、ブワーッと溢れ出してきたのを感じた。
「…何時だって…良いじゃないですか…」
「ん?なんだ?」
私のその呟きは小さ過ぎて、杏寿郎さんの耳には届かなかったようだ。
「…何時だって、良いじゃないですかっ!」
杏寿郎さんは私の大声に驚き目を見開いたまま固まっている。一方で私の方は、心の奥底に溜まっていた不満が溢れ出し、言葉となって口から溢れてきてしまう。
「今日くらい…みんなと会う時くらい好きにさせてくれたって良いじゃないですか!毎回…毎日報告しないと私は外出したらダメなんですか?この子が産まれるまでずっと、杏寿郎さんに確認しないと遊びに行く事も、買い物に行く事もしたらダメなんですか!?」
「…っナオ、落ち着いてくれ!あまり興奮しては腹の子に障る」
私を宥めるために言ったその言葉が、私の心を余計掻き乱す。
「…お腹の子さえ無事に産まれれば、私はどうでも良いんですか…?」