第13章 暖かく和やかに
もしあの時、不死川様が助けてくれなかったらどうなっていただろう。
想像すると、とても怖かった。
「…杏寿郎さん、早く帰ってきて…」
座卓にちょこんと置かれた虎のぬいぐるみに向かい呟いた。
けれども、こんな日に限って杏寿郎さんの帰りは遅かった。いつもなら遅くとも8時を回る前には帰って来るのに、今日は8時半を過ぎても帰って来ない。
居間で千寿郎さんと並びテレビを観ていると、玄関が開く気配と共に
「ただいま戻りました!」
と、杏寿郎さんの声が聞こえた。急いで立ち上がり、早歩きで玄関へと向かうと
「杏寿郎さん!」
「ナオ、遅くなってすまない」
いつもよりも心なしか疲れた様子の杏寿郎さんの姿が。私が杏寿郎さんの手から鞄を受け取り
「おかえりなさい。何かあったんですか?」
と聞くと
「うむ。生徒同士でトラブルがあってな。解決するのに時間が掛かってしまい遅くなった!」
杏寿郎さんは"困ったものだ"と言いながら笑った。けれどもそのトラブルとやらが余程大変だったのか、やはりその顔にはほんのりと疲れが見える。
今日は疲れているみたいだし。話すのは明日にしておこう。
「杏寿郎さん。鞄を置いたらご飯温めておくので、着替えに行きましょう。ご飯が済んだら、お風呂に入って、そうしたら2人で部屋でゆっくり休みましょう」
そう言いながら、鞄を持っていない方の左の手で杏寿郎さんの右手を取った。
「うむ。すまない。よし!たまには2人で風呂に入ろう!」
「…それは遠慮しておきます」
今になって思えば、この時にきちんと話をしておけば、あんなにも杏寿郎さんに酷い態度を取らなくて済んでいたかもしれない。
翌日の夜。私はいつもと同じ時間に家に着き、いつもと同じように槇寿郎さん、瑠火さん、千寿郎さんと夕食を取り、いつもと同じようにお皿を洗っていた。
バンッ!バンッ!
「…っと!」
激しい玄関の開閉する音に思わずお皿を落としそうになったのを、何とか堪えた。時間的に考えると杏寿郎さんが帰ってきたのかなとは思ったものの、それにしてはいつもと比べると激しいし、快活な帰宅の挨拶もない。
ドタドタドタドタ
そして玄関の音に負けない位激しい足音が居間に近づいてくる。
「杏寿郎さん…ですよね?」
「かと思いますが」
瑠火さんと目を合わせ首を傾げる。