第13章 暖かく和やかに
「じゃあご主人はこの椅子に座って下さい」
「承知した」
杏寿郎さんは助産師さんから言われた通り、私の足元ら辺に置かれた椅子に腰掛ける。
「それじゃあ先生が来るまでこのままお待ち下さい」
「はい」
そう言い残し、助産師さんは一旦部屋を出て行った。杏寿郎さんはパタリと扉が閉まるや否や、バスタオルの下に手をスッと差し入れ私のお腹をなでなでと優しく撫でる。
「仰向けで寝ていても出っぱっているとはなんとも不思議なものだ」
「本当に。でもこれからもっと、お腹で足が見えなくなるくらい大きくなるらしいですよ。今ある服じゃワンピースしか着れなくなってしまいそうです」
「ならば帰りに服を見に行こう!」
「え?良いんですか?やった!杏寿郎さんとお買い物なんて久しぶりです!」
そうこう話している間に、診察室の扉が開き
「こんにちは。煉獄さん今日は性別を知りたいんだよね?せっかくご主人もいるし、赤ちゃんが見せてくれると良いね」
そう言いながらエコーの準備をする先生は、チラリと杏寿郎さんの方に目線をやる。
「それにしても、ずいぶんご立派になられて。僕が知っているのは産まれて数日の姿と、弟さんが産まれた時に来てくれた時だから…いやぁ時の流れはあっという間だね」
「その節は世話になりました!そして妻のことも引き続きよろしくお願いします」
杏寿郎さんは私のお腹から手を離すと、そう言って頭を下げる。
「もちろんですとも。じゃあ電気を消しますよ」
パチンと部屋の電気が暗くなり、エコーの画面がよく見えるようになる。先生は私のお腹に機械を当て、位置を変えながら赤ちゃんの大きさをパチパチと測っていく。
「うん。この向きなら性別が分かりそうだな」
その言葉に、私が杏寿郎さんの方を向くと、杏寿郎さんも丁度私の方を向いたタイミングだったようで、お互いの目がパチリと合った。
どっちだろう。杏寿郎さんに似た男の子?それとも杏寿郎さんに似た女の子?
お察しの通り、端から"私に似ている"という選択肢は用意されていない。そんなの煉獄家の男3人を見れば誰だってそう思う。
「…お、これは…男の子みたいだね」
「「男の子!」」
杏寿郎さんと私の声が見事に重なった。
「きっとご主人にそっくりな赤ちゃんが産まれてくるね!」
はっはっは。と笑う先生に、私は心の中で激しく共感した。
