第13章 暖かく和やかに
助手席のドアを閉め終えても、杏寿郎さんは私の手を離す気配はない。
「あの、杏寿郎さん」
「なんだ?」
「…なんでもありません」
一緒に健診に来れたことがよほど嬉しいのか、杏寿郎さんの笑顔はキラキラと普段以上に輝いており、"恥ずかしいから離してほしい"とは言えなかった。
「そうか?では行こう」
私の手を引いた杏寿郎さんは、なんの戸惑いもなくそのまま病院のドアをくぐり受付へと進んでいく。
「こんにちは」
受付の女の子の挨拶に対し、杏寿郎さんがスッと息を吸う。
あ、不味いかも
そう思った私は咄嗟に杏寿郎さんと繋いでいる手の力にぎゅっと力を込めた。
「…っすまない。緊張で思いの外、大声が出そうになった。助かった」
私の方に振り返り、杏寿郎さんはそう小声で言った。私はそんな杏寿郎さんに
「母子手帳を出すので、一旦手を離してもらっても良いですか?」
と苦笑いをしながらお願いをする。
「うむ」
離してもらった右手で鞄から母子手帳を出し、受付へと近づく。
「こんにちは」
杏寿郎さんの代わりに私が挨拶を返し、母子手帳を受付に差し出した。
「煉獄さーん。中へお入りください」
受付を済ませて20分程待つと、診察室に呼ばれる。私が立ち上がったのにならい杏寿郎さんも立ち上がり、2人並んで診察室に向かった。ドアをノックし扉を開けるといつもの通り助産師さんの姿がそこにはあった。
「あら?煉獄さん今日はご主人と一緒?」
「はい。夫の仕事の休みとたまたま重なったんです。今日は性別がわかるかもしれないと言われていたので一緒に来てもらっちゃいました」
「それは良かったわね。それじゃあ体重から測るから、こちらにどうぞ」
「はい」
体重測定を終え、お腹周りをメジャーで測られている私を杏寿郎さんがじーっと食い入るように見ている。
「…そんなに見られると、恥ずかしいんですけど」
「すまない。何せ初めて目にする光景故気になってしまってな」
助産師さんはそんな杏寿郎さんの視線を気にすることなくテキパキと計測を終え、私の母子手帳に今日の記録を記入している。
「はい、じゃあ横になってお腹お出してください」
私はその言葉に従い靴を脱ぎ、ベットに横たわり服を捲り上げお腹を出す。そんな私の様子を杏寿郎さんは相変わらず無遠慮に見ている。