第13章 暖かく和やかに
お茶をテーブルに移動し、向かいの席にいつも通り瑠火さん、槇寿郎さん、千寿郎さんが座り、その反対側に杏寿郎さんと私が座る。
「…なんだか…大袈裟になってしまいましたね。すみません」
私がそう言って苦笑いをすると、
「いや、ナオが改まってあのように言ったということは大事な話なんだろう?どうした?」
杏寿郎さんが私を心配そうに見つめる。私はお茶を一口飲み、湯呑みを静かに置いた。
「…私、10月になったら仕事を辞めたいと考えています」
「ナオがそう望むのであれば俺は止めない。だが君は仕事が好きだろう?」
「はい。仕事は…好きです。やり甲斐もあって、職場環境にも恵まれて。続けたい気持ちがないかと聞かれれば、嘘になります。それでも…それ以上に、私はこの子と過ごせる時間が楽しみで仕方ないんです」
膨らみ始めたお腹を撫でると、この上ない幸福を感じた。
「最初は育児休暇を取って、復帰しようかなと思っていましま。でも…エコーでこの子の姿を見る度に、愛おしさが込み上げてきて、この子と可能な限りの時間を共に過ごし、この子の成長をこの目に焼き付けたいと…思うようになりました。大きくなったらまた働くことは出来ます。でも、このことの時間はそうはいきません。だから、仕事を辞め、しばらくは育児に専念させてもらいたいんです」
お金を稼ぐことはもちろん大切だ。会社に必要とされ、働きに出ることはそれだけで自己を肯定されているような気持ちにもなれる。それでも、それ以上に、この子と過ごす時間が、私に、そして杏寿郎さんに与えくれるものは大きい。
「ナオの気持ちは良くわかった。君がそう望むのであれば、俺は何も言うまい」
「私も構いません。子どもにとって母親と共に過ごせる時間はなによりも大切なもの。仕事を辞めるからと言って何も引け目に思うことはありません」
「俺も杏寿郎も、それなりに収入がある。お前は何も気にせず育児に専念すれば良い」
「僕も、家に帰ってきてナオさんと赤ちゃんがいてくれると思うととても楽しみです!ナオさんはナオさんのしたいようにすれば良いと思います!」
杏寿郎さん、瑠火さん、槇寿郎さん、千寿郎さんの優しい言葉が、ふわりと私の心を包み込んでくれた。
「…ありがとうございます」
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