第13章 暖かく和やかに
「…残念ですが、安定期に入るまでは、お互いに…刺激的なことは我慢ですね」
そう言ってへにゃりと笑う私に杏寿郎さんは
「…わかっていてそんな可愛い顔をするとは、いささか意地悪ではないか?」
困ったような笑みを浮かべた後、私の顎をクイッと掴むみ
ちぅ…
と優しく、それでいて私の唇を味わうような口づけを落とした。
「千寿郎、少し良いだろうか?」
杏寿郎さんと私は、千寿郎さんの部屋を訪れた。
「はい!どうぞ!」
千寿郎さんの返事を聞いた杏寿郎さんは、扉の取手に手を掛けサッと千寿郎さんの部屋の扉を開く。千寿郎さんは宿題をやっていたのか、勉強机に座りノートに何かを書いていた。
「すまない。宿題をやっているところだったろうか?」
「はい。でもちょうど終わったところなので、気にしないで下さい」
そう言ってノートを閉じて微笑む千寿郎さんは本当にいい子で、千寿郎さんと同い年であった頃の自分に見せてあげたいほどだ。
杏寿郎さんと私は部屋に入り、千寿郎さんが座っている机に歩み寄った。
「ちょっと聞いて欲しい事があるんだけど…良いかな?」
「はい。構いませんが…どうしたんです?2人一緒に改まって」
そう言って千寿郎さんは首を傾げる。けれどもハッと何かに気がついたように顔をあげると
「もしかして…兄上とナオさん…この家を出て行ってしまうのですか…?」
そう言って普段から下がりがちな眉をさらに下げ、悲しそうな顔をする。私は、
「違う違う!杏寿郎さんも私も出て行ったりしないよ!」
と慌てて言いながら、座っている千寿郎さんと目線を合わせるように屈んだ。
「では…一体何の話ですか?」
そう言って千寿郎さんは首を傾げる。私がチラリと杏寿郎さんの方を振り向くと
「ナオから話すと良い」
とニコリと優しい笑みを浮かべながら言った。
「…はい」
私は前を向き、再び千寿郎さんと目を合わせる。
「あのね、千寿郎さん」
「はい」
何を言われるか、まだわかっていなさそうな千寿郎さんはやはり少し不安気に私の目を見ている。
「私のお腹にね…杏寿郎さんとの赤ちゃんがいるの。千寿郎さん、おじさんになるんだよ」
「…え?」
その言葉に千寿郎さんは、瞳がこぼれ落ちてしまうんじゃないかと心配になる程目を見開く。