第13章 暖かく和やかに
そんな私の思いが杏寿郎さんには筒抜けだったのか、パチリと目が合うと杏寿郎さんはニコリと微笑み再び私に口付ける。
ちぅ…ちゅ…ぷちゅぅ
何度も触れては離れ、触れては離れ、私の心にはじわじわと温かさが広がり先程まで感じていた不安のようなものは何処かへと消えていった。
最後に一度
ちゅっ
と軽い音を立て、杏寿郎さんの唇が私から離れていった。
「…落ち着いたか?」
「…はい」
そう言うと杏寿郎さんは私の目をじっと見つめ
「君を責めるような言い方になってしまい本当にすまなかった。だが俺はナオと腹の子が兎に角心配でたまらないんだ」
そう言って私の涙の跡を拭う。
「杏寿郎さんの気持ちも、言いたいこともわかっています。…多分私も今、情緒不安定になっていて感情のコントロールが上手く行ってないんです」
あんな風に杏寿郎さんに軽く叱られる事なんて別に珍しい事なんてない。けれどもその事でこんな風に泣くのは今回が初めてだった。自分の無自覚な行動に対する情けなさ、予想外の杏寿郎さんの反応、そして多少なりに感じている僅かな不安。その事が複雑に絡まり合って涙としてこぼれ落ちてしまった。
「俺もナオも、子を身籠ったことに関しては全くの無知だ。俺はまた心配のあまり君を同じことをしてしまうやもしれない。もう同じ事がないように気をつける。…だがもし、気付かぬうちにまた俺が君を傷つけてしまうような事があったら必ず言って欲しい」
そう言って眉を下げる杏寿郎さんの頬を、私は左手でスルリと撫でた。
「…はい。2人で一緒に学んで行きましょう。妊娠の事、赤ちゃんの事、これからの生活の事。…楽しみがいっぱいです!」
そんな風に考えていると、私の口角は自然と上がった。
「ようやく笑ってくれたな。よし、もう一度口付けたら千寿郎の元へ行こう!」
「…またするんですか?」
「うむ!心配いらない!触れるだけの軽いもので済ませる!舌を入れてしまいたいところだが、そうなるとそういう気分になってしまうからな!しばらくは我慢しよう」
「…っ」
そう。実は私も同じ心配をしていた。触れるだけの、食むような口付けは心が満たされるようでいくらでも、もっとして欲しいと思う。けれども、口内を犯されるような口付けは、今は出来ればあまりしたくなかった。