第13章 暖かく和やかに
先程もらったエコー写真を杏寿郎さんに差し出しながら
「一生懸命心臓が動いていましたよ。予定日は11月20日だそうです」
と、私が言うと、杏寿郎さんは
「そうか…そうか」
と噛み締めるように言った。
「お昼の用意があるので先に私は行きます」
「あ、じゃあ私も…」
そう言って台所に向かう瑠火さんを追いかけようとするも
「疲れているでしょう?ナオさんはゆっくり休んでいて下さい。それに千寿郎と話をするのでしょう?」
と、私を制止し1人台所へ行ってしまった。そう。千寿郎さんにはまだ私が妊娠したことを伝えていない。槇寿郎さんと瑠火さんには成り行き上伝えないと言う選択肢はなかった。けれども杏寿郎さんと話し合って、千寿郎さんにこの事を伝えるのは、せめて心拍の確認が取れてからにしようと決めたのだ。だからこの1週間、煉獄家の中で唯一、千寿郎さんだけが私の妊娠を知らなかった。
罪悪感を感じなかった訳じゃない。それでも、必ず元気に育ってくれると信じていても、"もし、万が一"と考えた時、千寿郎さんを悲しませたくないと思った。
「はい。ありがとうございます」
瑠火さんはニコリと微笑むと台所へと去って行った。
「よし、それじゃあまずナオは靴を脱ぐと良い」
杏寿郎さんに言われ足元に目を向けると、確かに私はまだ靴すら脱いでいなかった。
「…そうですね」
片足立ちになり上げた方の靴を脱ごうとすると、
「こら。危ないだろう。きちんと座って脱ぎなさい」
と杏寿郎さんが私の両肩をガシッとその腕で掴み支えながら言った。
「っすみません。ダメですよねこういう所…。もっと妊婦としての自覚を持たなくちゃですね」
眠いという以外の症状がないせいか、たまに自分が赤ちゃんを身籠っているという事実を忘れそうになってしまう。私が"ヘヘッ"と笑いながら言うと
「頼むぞ。俺がそばにいられる時は良い。だがそうじゃない時、君が君自身と腹の子を守らなくてはならない」
と、私の予想とは違い杏寿郎さんはほんの少し怒ったように言った。"仕方ない子だ"といつもみたいに笑って言ってくれると思っていたのに。
「…っ…ごめんなさい…」
喉の奥が熱くなり、じわりと涙が込み上げてくるのを感じた。