第13章 暖かく和やかに
瑠火様はその言葉に対して間髪入れることなく
「はい。自慢の娘です」
と言った。私はそれが嬉しくて、でもほんの少し恥ずかしくて
「もう!瑠火様ったら!そんなに煽てても何も出てきませんよ」
とニヤニヤと笑ってしまう。
「…お姑さんを"様"付けで呼ぶなんて、やっぱり煉獄家の人たちはみんな個性的ね」
と言って笑う鰯谷さんの言葉に、私はまたしてもやってしまったと思わず自分の頬を人差し指でポリポリと掻いた。
次の予約を済ませ、今日の診察は終わりとなった。
病院から出るなり
「子どもも産まれることですし、ナオさんのその"瑠火様"と言う呼び方、そろそろ直したほうが良さそうですね」
と瑠火様がほんの少し困った顔で言う。今までも何度か直したらどうかと言われたことはあった。けれども私はこの呼び方を気に入っており、なんやかんやと理由をつけてはお断りしてきた。
「…すみません…つい癖で…」
「家で呼ばれる分には全く構わないのですが、ああ言われてしまうと流石の私も若干の気恥ずかしさを感じてしまいます」
瑠火様の言うことはもっともだ。寂しさはある。けれども子どもも産まれてくるし、物心ついた時に母親が祖父母のこと"様"付けで呼んでいるのはこの時代を生きる者としては違和感を感じてもおかしくない。
「…わかりました!私、煉獄ナオは、この子の親になる為の第一歩として、大好きな''槇寿郎様"呼び、そして"瑠火様"呼びを卒業いたします!」
瑠火様…もとい、瑠火さんは、握り拳を作ってそう宣言する私を
「やはりナオさんも、杏寿郎に負けず劣らず変わったところがありますね」
と小声で言ったのは、この際だから聞かなかったことにしよう。
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家に帰ると、部活に行っていた杏寿郎さんと千寿郎さんが既に戻ってきているようで、玄関には2人の靴が仲良く並んで置かれていた。
「ただいま戻りましたー」
私がそう声を掛けると、居間の方からバタバタと騒がしい足音を立て、杏寿郎さんが走って玄関までやって来る。
「ナオおかえり!」
「ただいま。杏寿郎さん」
「杏寿郎、廊下をそんなにバタバタと走るものではありません」
「すみません!母上、おかえりなさい!で、どうだった…?」
杏寿郎さんはそう声を顰めて聞く。