第13章 暖かく和やかに
「そうなんです。ここの病院を教えてくれたのも義母でして。今日も付き添いで来てくれているんです」
そう言うと、先生は目を細め嬉しそうに笑った。
「そうですか!彼女の出産のことはよく覚えていますよ。今までのどの妊婦さんよりも静かなご出産で、目を見張るものがありました」
「…それはそれは…」
なんとも瑠火様らしいと思ったが、同じ事を私に期待されていたらどうしようかと若干の不安を感じる。
「どちらかと言えばご主人の方が騒がしくてねぇ。しかも、煉獄さんのご主人、ぱっと見強面な方でしょう?その対比がなんとも面白くてしばらく話題になったくらいです」
"おっと、これは失言でしたね。忘れてください"なんて言って先生は自分の口に手を当てていた。
「あははっ!」
容易に想像できてしまう光景に、私は声を出して笑った。
待合室に戻り、瑠火様の方へ行くと瑠火様は年配の助産師さんと思われる人と親しげに話をしていた。
「瑠火様お待たせしました」
そう言って私が声を掛けると、2人が私の方に振り向く。その時、助産師さんが"様…?"と不思議そうに呟いたのか耳に入り、人前でこの呼び方は不味かったかと思ったがもう口にしたしまったので仕方ない。私は助産師さんに軽く会釈をしてから瑠火様の隣に座った。
「どうでしたか?」
「無事、心拍が確認できました!予定日は11月20日だそうです」
そう言いながら、瑠火様にエコー写真を差し出すと
「…そうですか」
と微笑みながら受け取った写真を眺めている。
「初めまして。こちらで助産師をしております鰯谷です。あなたのご主人とその弟さんを取り上げたは私なのよ」
「そうなんですか!じゃあ是非とも私も鰯谷さんにこの子を取り上げてもらえるよう頑張ります!」
そう言いながら私は、まだなんの膨らみも感じない下腹部に手を伸ばす。
「あら。嬉しいことを言ってくれるわね。妊娠初期はなにかと不安になるかと思うけど、悪阻が大丈夫であればきちんとご飯を食べて、きちんと睡眠をとって、普段通りの生活を心がけてね」
鰯谷と名乗る助産師さんは、とても優しげで尚且つ"ベテラン助産師"という雰囲気を醸し出しており、私はとても安心感を覚えた。
「はい!ありがとうございます」
「ふふっ。可愛いお嫁さんが来てくれて良かったわね」
と鰯谷さんは瑠火様に微笑み掛けた。
